2026年8月24日、星川駅直結の星天qlayにオープンした循環文化創造拠点「Sta.R(ステーション・アール)」。この度、当拠点の本格開業を記念した一日限りのオープニングフェス「R Fes(アール・フェス)」を9月19日(土)に開催し、143名の方にお越しいただきました。
駅の改札を出て、たった1分。そこに広がっていたのは、廃材や規格外品が新しい価値へと生まれ変わっていく現場であり、その背景にあるつくり手たちの物語を聞ける場所であり、そして「循環」というテーマのもとに、横浜という街の色々な人・企業・行政がゆるやかにつながっていく風景でした。
この記事では、当日の様子を振り返りながら、Sta.Rがどんな一日を過ごしたのかをお伝えします。
廃材が新しい道具に変わる。消防ホースワークショップと塗り絵
イベントは、「消防ホースで防災ポーチづくりワークショップ」からスタートしました。役目を終えた消防ホースを素材に、丈夫で特徴的な質感を活かした防災ポーチをつくる60分間。予約制のワークショップでしたが、廃材が新しい道具へと姿を変えていくプロセスを、参加者の方々に間近で体験していただきました。

同時並行で行われていたのが、アーティスト・遠峯未来(Miki Tomine)さんによるオリジナル塗り絵です。地域を流れる帷子川の生き物調査をもとに描かれた絵柄で、随時参加できる形で開催されました。子どもから大人まで、思い思いのペースで足を止めていく姿が印象的でした。

つくり手たちの声を聞く。サーキュラーマテリアル・ショーケース
この日は、Sta.Rの店頭に並ぶ商品や素材のつくり手たちが、その背景を直接語る「サーキュラーマテリアル・ショーケース」も行われました。6組の生産者・企業が登壇しました。
トップバッターは、Sta.Rのシンボルでもあるモニュメント「R」を手がけた美術家で似て非WORKS 主宰の稲吉さんです。この大きなR のモニュメントは、地域の皆さんから「思い出のかけら」として集めたものや、一度役割を終えたものを、「時の断面」として閉じ込めて、その記憶ごと未来へアップサイクルするものです。実は「大きなRを作ろう」というアイデアには、Sta.Rの什器・空間デザインを手がけるクリエイティブ・ディレクター、松田裕多さんの発想も入っていたそうです。自分の考えとぴたりと重なったことを、稲吉さんは「テレパシーみたいな」交流だったと楽しそうに振り返ります。「なんとかギリギリまで作業をして、ようやく自立したところです」という言葉に、会場から温かい拍手が送られました。

続いて、湘南貿易の土井さんが紹介してくれたのは、ペットボトルキャップなどの廃プラスチックを溶かして再形成する小型のリサイクル装置。今回、Sta.Rのレジカウンター天板として実際に納品されたのも、Sta.Rで集めたペットボトルキャップを使い、この技術でつくられたものです。横浜FCのベンチや、ヘリーハンセンのショップイベントで使われるロゴ入りカラビナなど、様々な企業とのコラボレーション事例も紹介されました。

kitafukuの松坂さんが話してくれたのは、クラフトビール醸造の過程で大量に廃棄されている「モルト粕」を再生紙に混ぜ込んだ「クラフトビールペーパー」。全国有数のクラフトビール激戦区である横浜ならではの課題を、紙という形で解決する取り組みです。すでに100社以上が導入し、海外からも30カ国以上の反響があるといいます。

原貿易の江守さんが紹介したのは、社内で行っているリユーストナーカートリッジの品質・印字試験で発生し、廃棄されていた「裏紙」を活用したメモ帳です。創業71周年を記念して、社員へのサプライズギフトとして企画されました。表紙のクラフトビールペーパーを提供したのはkitafuku、メモ帳全体のデザインならびに印刷・製作は大川印刷、そして完成品をカーゴバイクで運んだのはクリオシティ。まさに4社の連携から生まれた一冊でした。「地域って捨てたもんじゃないな、地域の企業さんが繋がるってめちゃめちゃいいことなんじゃないかな」という言葉が印象に残ります。

武松商事が運営するくるり工房の伊藤さん・船田さんは、ビニール傘から作ったミニバッグなど、身近な廃棄物をアップサイクルする活動を紹介してくれました。「ものの見方をくるりと変える」というコンセプトのもと、専門的な道具がなくても家庭で再現できるワークショップを重ねてきたそうです。「日常の中で、これは何かに使えないかなという視点を持つようにしている」という伊藤さんの言葉から、アップサイクルは日々のものの見方から始まることが伝わってきました。

トリを飾ったのは、“コンブ王子”の異名を持つ幸海ヒーローズの富本さんです。横浜・八景島でのコンブ養殖を通じて、全国で深刻化する、海の砂漠化とも呼ばれる「磯焼け」の問題に取り組んでいます。Sta.Rでも販売されている「こんぶせっけん」は在庫過多から生まれたアイデア商品です。その後は、育てたコンブそのものがLUSHの商品の原料に採用されるなど、活用の場は海外にまで広がっています。

6組それぞれ全く異なる素材・背景を持ちながら、共通していたのは「捨てられるはずだったものに、新しい役割を与える」という視点でした。
横浜グリーンエクスポ関連展示+リボンリースワークショップ
会場の一角では、保土ヶ谷区との連携により、「横浜グリーンエクスポ」関連の展示とリボンリースワークショップも行われました。昨年の区民まつりのフォトブースで使われたリボンを材料の一部として再利用し、参加者が思い思いに結んでいくワークショップには、子どもから大人まで幅広い世代が参加しました。

星天qlay全体をめぐる、回遊クイズ企画
同日は「星天qlayの日」でもあり、YADOKARI主催による、館内の各施設を回遊しながらクイズに答える企画も実施されました。Sta.Rでは、松田さんがデザインしたREYOの椅子を1台展示し、椅子を題材に「ものの見方」を学べるクイズとして紹介いただきました。

循環は、人と人の間でも起きている。Gallery TalkとЯ gallery《circle to circle》
この日は、Sta.R内に新設されたギャラリースペース「Я gallery(アールギャラリー)」のこけら落としを飾る、アーティスト Mikiko Kamadaさんによる個展《circle to circle》の記念トークイベントも開催されました。進行を務めたのは、Route Designの津田さんです。Sta.Rとともに、クリエイター向けコワーキングスペース「PILE」を運営しています。
Я galleryという名前には、あえて「R」を反転させたものを使っています。マテリアルライブラリーやリストア(物販)が体現する「Reuse・Remake・Recycle」といったポジティブな行動を促す“R”に対し、Я galleryは「Rethink・Reconsider・React」といった、批評的な視点を促す“Я”。この2つが向き合って、初めてSta.Rという場所が完成する。そんなコンセプトが、この名前には込められています。

Mikiko Kamadaさんは、ダイズの遺伝子研究を専門としていた学生時代から、植物・微生物をテーマにしたアーティストへと転身した経歴の持ち主。2025年には大阪・関西万博のシグネチャーパビリオンで半年間の常設展示を手がけるなど、注目を集める作家です。
今回の個展タイトル「circle to circle」は、当初「Expo to Expo」という案から生まれたものだそうです。大阪・関西万博での展示と、来年3月に横浜で開催されるGREEN×EXPO 2027、その中間地点にあるSta.Rでも同じように循環が起きている。そんな発想から、このタイトルに行き着いたといいます。
展示の中心となるのは、3つの「Flower Compost」の瓶です。大阪万博で分解を終えた「PAST」、設営時に詰めた花がこれから分解されていく「PRESENT」、そして横浜の花を詰め、誰でも花を持ち込める開かれたコンポストとして使われている「FUTURE」。花が微生物によって分解され、土へと還っていく過程そのものを作品として見せる、Mikikoさんならではの視点が込められた展示です。
会場中央に置かれた椅子の作品も見どころのひとつです。素材となったのは、横浜市内の学校の体育館で使われていた床材で、Sta.Rの什器制作に使われた端材でもあります。木工を松田さんが、漆を、漆のアップサイクルプロダクトブランド「twofold(ツーフォールド)」を手がけるオランダ在住の漆アーティスト・デザイナー、HaruNoraさんが担当した、3名による共作です。「誰かと一緒に作る」という体験そのものも「circle to circle」というテーマを体現していると、Mikikoさんは語っていました。


トークの最後には、来場者にもその場でFlower Compostへ花を入れてもらう一幕もありました。「入れていただいた方の手の表面にいた微生物も一緒に入って、新しい循環が始まる」というMikikoさんの言葉通り、この日の来場者一人ひとりも、この循環の輪の一部になりました。
なお、Я gallery 1st Exhibition《circle to circle》は10月18日(日)で終了しました。
おわりに
消防ホースから防災ポーチが、モルト粕から紙が、廃棄されていた花から土が生まれる。この日Sta.Rで起きていたのは、素材の循環だけではありませんでした。稲吉さんと松田さんのアイデアが重なって大きな「R」が生まれたように、そして江守さんの裏紙メモ帳が4社の連携から生まれたように、人と人との出会いもまた、ひとつの循環として重なり合っていました。
Sta.Rは、これからも横浜市・保土ヶ谷区・相模鉄道株式会社・株式会社相鉄アーバンクリエイツ・株式会社相鉄ビルマネジメントとの連携のもと、Creative Circular City Collective(アーティクル株式会社/合同会社Route Design)が運営していきます。ワークショップやギャラリー展示は今後も続いていく予定です。ぜひ、星川駅で少し寄り道してみてください。
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