イリノイ大学による「サーキュラーデザインツアー」 in 横浜を開催しました【イベントレポート】
- On 2024年6月18日
Circular Yokohamaは2024年5月24日、アメリカ・イリノイ大学アーバナ・シャンペーン校を迎え、横浜にて「Circular Design Learning Tour (以下、サーキュラーデザインツアー)」を開催しました。
当日は、イリノイ大学でサーキュラーデザインを専攻する学生や先生16名とともに横浜市内を視察しました。
イリノイ大学アーバナ・シャンペーン校「サーキュラーデザインツアー」について
アメリカ・イリノイ大学アーバナ・シャンペーン校(以下、イリノイ大学)では、サステナビリティやサーキュラーデザインに特化した2週間の海外研修を提供しています。同校の学生を対象に、日本国内の地方自治体や企業の取り組みを視察するプログラムです。
横浜はその目的地の一つであり、Circular Yokohamaではサーキュラーデザインや循環型のまちづくりを見て学ぶ1日のツアーをコーディネートしました。
パート1:相鉄線沿線における循環型のまちづくり
はじめにイリノイ大学の皆様をお迎えしたのは、Circular Yokohamaの活動拠点qlaytion galleryが入居する商業施設「星天qlay」です。
まずは、横浜のサーキュラーエコノミーを見て、触って、体験できるYOKOHAMA CIRCULAR DESIGN MUSEUM見学を実施しました。学生たちは、各々関心のあるアイテムを見学し、横浜にゆかりのあるユニークなアイデアの数々に触れました。
続いて、Circular Yokohamaによる活動紹介です。Circular Yokohamaを運営するハーチ株式会社が手掛けるウェブメディアとしてLife HuggerやZenbirdの紹介、そしてCircular Yokohamaがqlaytion galleryで展開している地域密着型の活動についてご説明しました。
今回の星天qlay視察の目的である「鉄道沿線における循環型のまちづくり」については、株式会社相鉄アーバンクリエイツのご担当者さまに解説していただきました。
相鉄線は横浜市内を走る鉄道会社で、星天qlayのある星川駅は、相鉄沿線の駅の一つです。星天(星川、天王町)エリアでは、持続可能なまちづくりとして「社会・地域に働きかけ、変化を楽しむ人がつながる 生きかたを、遊ぶまち」をテーマに掲げた開発を行っています。
イリノイ大学の学生の注目を集めたのは、星川駅~天王町駅間における高架下空間の開発プロジェクト。
近年、鉄道の発展により都市部では踏切による道路渋滞が社会問題となっています。ラッシュ時には1時間のうち50分以上も踏み切りが閉まっている区間もあり、交通渋滞や周辺住民の生活利便性に大きな影響を及ぼしています。
この問題を解決するために相鉄グループでは、元々地上を走っていた鉄道を高架化し、地上空間の利活用に向けて星天qlayをオープンしました。都市部での高架下を開発には技術的および経済的な困難が多いとされていますが、新しいまちづくりを通じて、線路沿いに価値を創造しながら収益性を確保することに挑戦しています。
解説のあとに、相鉄アーバンクリエイツの担当者とともに星天qlayのまちあるきも実施。
「鉄道を高架化するのではなく、線路の上に車用の橋をつくるというアイデアはなかったのか」、「星天エリアの開発によって周辺地域でジェントリフィケーション*が引き起こされている可能性はあるか」など、学生たちからは様々な疑問が飛び出しました。相鉄グループでは、サステナビリティの観点を前提とする意思決定がなされた経緯を説明しながら「鉄道が高架化されてから6年、星天qlayがオープンしてから2年という時間軸において、開発の成果や影響は長い目で観察していきたい」と話しました。
ジェントリフィケーション:都市の富裕化現象のこと(出典:IDEAS FOR GOOD「ジェントリフィケーションとは・意味」)
ほかにも多くの質問や議論が生まれ、アメリカの都市開発との違いやサステナブルな都市開発の展望について深く学ぶ時間となりました。
パート2:食を通じたサーキュラーデザイン
星天エリアの視察を終え、学生たちは天王町から横浜まで相鉄線に乗り、みなとみらいエリアへと向かいました。乗車中に各駅に番号が付いていたり、各路線に色がついていることに気づいた学生は、観光客や地元の人々にとっての利便性に配慮した日本の鉄道システムに感嘆の声をあげていました。
ふたつめの視察先は、馬車道にあるお土産ショップ「haishop」とサステナブルレストラン「Kitchen MANE」です。
はじめに、お土産ショップを訪れ、エシカルやサステナビリティに配慮した選りすぐりのお土産を見て回りました。
続いて、レストランでヴィーガンのランチをいただきながら、両店舗を運営する株式会社Innovation Designの担当者から、食を中心とするサーキュラーデザインについての解説を聞きました。
Innovation Designでは、サステナビリティの実現に向けて独自のアプローチを取り入れています。例えば、全従業員が「サステナブルデザイナー」という肩書きを持っており、どのチームやプロジェクトに所属していても、日常的にサステナビリティについて考え実践をするよう促しているといいます。
様々な取り組みの成果として、Innovation Designは食のアカデミー賞と称される「FOOD MADE GOOD」のプログラムで三つ星を獲得しています。
学生たちは、食を通じたサステナビリティの実現に向けた具体的なアクションを学ぶとともに、実際の食体験を通じてその重要性を実感していました。
パート3:サーキュラーデザインを通じた文化交流
Kitchen MANEから次の目的地である神奈川大学までの15分を徒歩で移動し、住宅地である「星天qlay」とビジネス街であるみなとみらいエリアとの違いを観察しました。
最後のプログラムは、神奈川大学とイリノイ大学との文化交流です。
神奈川大学でデジタルファブリケーションやIoT技術を活用して様々なアイデアをカタチにする取り組みを行っている経営学部道用ゼミが参加し、同ゼミから21名の学生が集まりました。
はじめに、神奈川大学の学生がサーキュラーデザインプロジェクトの紹介を英語で行いました。それを聞いたイリノイ大学の学生たちは、デジタルファブリケーションを活用したクリエイティブなアイデアに関心を寄せていました。
後半は、両大学の学生による交流タイムです。学生たちはグループに分かれてカジュアルなディスカッションを行いました。
言語の壁があっても、それぞれが自分の研究プロジェクトを説明したり、アイデアを交換したりしていました。話題は研究だけでなく、学校生活や文化の違い、卒業後の夢にまで及ぶなど、多様な交流が生まれました。
プログラムの終わりには、それぞれが「友達」との別れを惜しみつつ、イリノイ大学の先生と学生からこの度の貴重な機会への感謝の言葉があり、本ツアーは幕を閉じました。
開催後記
2週間にわたるイリノイ大学の日本ツアー。横浜訪問はその終盤に予定されていたため、「疲れがたまっているころかも」と、企画段階から少々の心配を抱いていたCircular Yokohamaのメンバー。
しかし、実際に横浜に到着したイリノイ大学の学生たちは全員がとても熱心かつまじめな姿勢でツアーに参加してくださいました。各視察先では、多角的な視点から数多くの質問や議論が行われたことを大変嬉しく思っています。
1日のツアーは、横浜のまちや文化を理解するためには十分な時間ではなかったかもしれません。しかし、このツアーに参加した学生たちがここで得た新しい発想やつながりが、彼らの未来において活かされる日が来ることを願っています。
そして、相鉄アーバンクリエイツ、Innovation Design、神奈川大学の各ご担当者さま、ならびに本ツアーの開催をサポートしてくださいました皆さまに深く感謝いたします。
Circular Yokohamaでは今後も、世界のサーキュラーエコノミーに貢献する幅広い活動に取り組んでまいります。
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【参照サイト】株式会社相鉄アーバンクリエイツ
【参照サイト】星天qlay
【参照サイト】株式会社Innovation Design
【参照サイト】神奈川大学みなとみらいキャンパス