サステナブルなヒト、モノ、情報の輪をつくり、広げ、未来へつなぐ
- On 2020年10月21日
横浜市青葉区を拠点に、青葉・港北エリアのサステナブル志向の地域情報発信やイベント運営を通じたまちづくり活動を行っているNPO法人森ノオト。ウェブメディア「森ノオト」で地域の環境を大切にするビジネスや活動に取り組む地元の人々を市民ライターが取材、発信しながら、サステナブルなコミュニティを育んできました。新型コロナウイルスの流行で活動の変更を余儀なくされる中にあっても、サステナビリティを大切にしながらヒト、モノ、情報の輪を動かし続けています。最近新たに始まったサーキュラーな取り組みを2つ、ご紹介しましょう。
ウィズコロナ時代の新しいお買い物「ウェブいいかも市」
森ノオトでは、取材でつながりのできた地元のお店に出店してもらって月に一度、地産地消の屋外マルシェ「いいかも市」を開催していました。しかし、新型コロナウイルスの流行で集まってのマルシェ開催は不可能に。森ノオトには来店客の減少に見舞われる地元のお店の様子や、マルシェのお客様からの「毎月のお買い物ができなくて寂しい」という声が伝わってきました。そこで、まずはスタッフ間でやってみようということで、いいかも市に出店していたお店の商品を共同購入することに。緊急事態宣言が解除されたのを機に、これらのお店の商品をウェブサイトから注文し、森ノオトの事務所「森ノオウチ」で商品を引き取れる「ウェブいいかも市」を2020年6月から本格的にスタートさせました。
地産地消のループで地域の良品を応援
ウェブいいかも市では、森ノオトのウェブサイト内のページに設けたフォーム上で3000、5000、7000、9000円の各コースから選ぶと、コースに応じてお店が提供するさまざまな商品を購入できます。地元農園からの新鮮な野菜や、地元で評判のこだわりベーカリからのパン、季節のお花などなど、毎月異なるお店が提供する商品を選べます。日々の暮らしを美味しく豊かにしてくれる品物に、引き取り当日が楽しみになります。
商品の引き取り時は、もちろんマイバック持参です。手慣れたお客様は、保冷材も持参していました。各店から提供される商品の包装は、衛生面に配慮しながら極力プラスチック包装を減らすことも意識しています。
新型コロナウイルスの流行をきっかけに、テイクアウトやデリバリーがにわかに広がりました。もちろん便利ですし、客足が減りがちなお店の応援にもつながるでしょう。しかし、単なる商品のやり取りだけで、少し味気なさを感じることはないでしょうか。そんな時、商品を引き取りながら森ノオトのスタッフや偶然出会った他のお客様とのつかの間のおしゃべりを楽しむことを通じて、地域での新たなつながりが生まれるきっかけをウェブいいかも市では提供しているのです。
ウェブいいかも市を担当する理事の梅原昭子さんは、形を変えていいかも市を運営し続ける意義をこう振り返ってくれました。
梅原さん「最初はお客様ごとに注文商品をこちらでまとめて渡すという、まさに生協スタイルの『共同購入』でしたが、途中から商品を手に取りながら持参したマイバッグに自分で詰めてもらう『共同売店』の形に変えました。この少しの時間でもおしゃべりできるのがいいですね、と言って下さる方も多くて好評です。先日は年配の女性が『ここに来て久しぶりに話した』と言ってくれまして、このような形で場を開くことの重要性を改めて感じます」
共同購入から共同売店へ 人とお店をつないで街を元気に
ウェブいいかも市の商品の引き取りは、感染症対策のため時間予約制です。入れ替わり立ち替わりに森ノウチにやって来るお客様たちは「出店していたお花屋さんKonitaのインスタグラムでいいかも市のことを知り、楽しそう!と思って注文してみました。今回は初めて、お友達も誘ってまとめて購入しました」「今回で3回目。近所で大好きなパン屋のヒュッグリーさんが出店していたので行かなきゃ!と思って」など、楽しそうに話してくれます。
出店するお店の一つ、ハム製品などを製造・販売するシュタットシンケンは、各地のマルシェイベントに数多く出店していましたが、それらがすべて中止に。個別対応は大変なので、まとめて注文してくれるウェブいいかも市はありがたい、と言ってくれているそうです。先にウェブいいかも市に出店したお店から聞いて参加を決めたお店もあり、商品を提供するお店も広がっています。
3密を回避しながら、地域の人とお店をつなぐ新しい共同売店「ウェブいいかも市」。梅原さんは、こうした形式が各地に広がることに期待を寄せています。
梅原さん「江田やあざみ野など、他の場所でもやってほしい、やりたいという声をお店やファンからいただいています。自分たちが出て行ってやるのは大変なので、お店側にある程度任せる形なども考えていきたいです。そして、私たちがここでやるだけでなく、各地域でうまく仕組み化して、街そのものが非常時に耐えられるネットワークとして、小さくでもサーキュラーエコノミーにつながる取り組みに育てたいですね」
寄付布と手芸用品のアウトレットマーケット「めぐる布市」
森ノオトにはもう一つ、地域でのサーキュラーエコノミーの実践につながる取り組みがあります。それが、アップサイクル衣料品・雑貨ブランド「AppliQué (アプリケ)」です。
AppliQué は2017年のスタート以来、家などで使われなくなった端切れから、可愛い子ども服や色鮮やかなマイバッグなどを手作りで製作、オンラインを中心に販売しています。しかし、新型コロナウイルス流行の影響もあり、工房でスタッフが集まっての製品開発・制作がしにくい状況が続く一方、全国各地から集まってくる寄付布は増え続けていきました。
こうした中、素材を製品化して循環させるスタイルから、集まった素材を欲しい人たちに再び売る形で循環させようと、寄付布や手芸用品を再販するアウトレットマーケット「めぐる布市」を、森ノオト事務所敷地内のアトリエ「森ノハナレ」で2020年6月から定期的に開催しています。
AppliQuéでは当初、2020年3月に生活クラブ神奈川(横浜北)と合同で200人規模収容の会場で手芸素材の再販イベントを行う予定でしたが、新型コロナウイルスの流行でキャンセルに。そこで、まずは自前で、小規模で行えないかと考え、森ノオウチ敷地内にある森ノハナレを専用スペースとして「めぐる布市」を始めました。
送られてきた布や手芸用品の山から仕分けをし、1枚1枚の布を切りそろえたり、シミがないかチェックしたりするのはすべて手作業です。時間もかかり、相当大変なはずですが、AppliQuéに関わる手芸好き、布好きの森ノオトのスタッフの皆さんにとっては、あまり苦にならないようです。素材が欲しい人がどのぐらいいるのか分からない中手探りで始めたとのことですが、「目当てのモノはなかった時でも、思わぬものが手に入る」と好評なのだそうです。
「AppliQuéなら大切にしてくれる」 リサイクル率低い布が再び活きるとき
世界では衣料のリサイクル率が約12%と低く、日本でも布製品のリサイクルはあまり進んでいません。家庭などで眠る布を再利用してアップサイクルしたり、布を素材としてそのまま再販したりするのは、ありそうでなかった試みです。布は引き取ってくれたり売れたりする場が少ないことも影響してか、寄付布の送料が送り手負担にもかかわらず、近隣だけでなく遠方からも手芸用品とともに送られてきます。AppliQué なら大切に扱ってくれそうだとして、親の代から使っていた手芸用品とともに寄付布を持ってきてくれる人も。「捨てるとつくるを楽しくつなぐ」をテーマに生まれ変わったAppliQuéは、大切なものが再び活かされることを願う人々の思いの循環も創り出しているのです。
サーキュラー志向の地域を広げるために
森ノオト理事長の北原まどかさんは、コロナ禍をきっかけに生まれた「ウェブいいかも市」と「めぐる布市」という2つの取り組みについて、このように位置づけます。
北原さん「この2つの取り組みは、足元のローカルでの活動とサーキュラーエコノミーにつながる仕組みが足し合わさったものだと捉えています。地域の市民活動にとって、グローバルな文脈から見て、活動の意味がどのような部分にあるかを知ることは、とても大切です」
北原さん「森ノウチも、循環型のあり方を唯一無二の場として形にしているつもりですので、ぜひ一度来てみて下さい。そして、各地に私たちと同じようなサーキュラー志向な地域が生まれてほしいですね」
コロナ禍を経て新たな事業を作り続けながらも、地域発でサステナブルなヒト、モノ、情報の輪をつくり、広げ、未来へとつなげようとしている森ノオトの思いは変わりません。
【関連イベント】横浜のサーキュラーエコノミーを推進する学習プログラム開催中
(今回取材した森ノオトの北原氏が第4回・1月27日に登壇/1月30日(土)に実際に森ノオトに訪れるフィールドワークを開催します)
Maki Kimura
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