循環都市を作るのは、“100の横浜らしさ”。行政が支えて広げる市民協働『STYLE100』の物語【横浜市とサーキュラーエコノミーのあゆみ Vol.3】
- On 2026年3月30日
※本記事は、横浜市国際局が運営する「Green Hub in Asia」に2026年1月に掲載された記事の翻訳・一部編集版です。横浜市職員や民間事業者への取材をもとに、Circular Yokohamaを運営するハーチ株式会社が制作しています。
太平洋に面した美しい港町・横浜。1859年の開港以来、日本における「世界への玄関口」として多様な文化を受け入れ、独自の発展を遂げてきました。現在では人口370万人以上を抱え、日本最大の政令指定都市として、国内経済や文化を牽引する重要なハブとなっています。

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その急速な発展の裏で、横浜は廃棄物の増加や公害といった課題にも直面してきました。しかし、横浜はその度に「市民力」を原動力として乗り越えてきました。
象徴的なのが、2002年から2010年にかけて行われた廃棄物削減計画「横浜G30プラン」です。当時、ごみ処理能力が限界に達していた横浜市は、市民の徹底した分別協力によってごみを4年間で約30%以上削減し、その後2つの焼却炉を廃止するという快挙を成し遂げました(※G30の成果)。
行政と市民が手を取り合って街をつくるこうした「市民協働」の歴史こそが、横浜のアイデンティティです。
そして今、横浜市はその経験を活かし、本格的にサーキュラーシティへの移行を目指しています。2025年11月に横浜で開催された「アジア・スマートシティ会議2025 (Asia Smart City Conference 2025)」では、アジア全域に循環型都市への移行を呼びかける「アジア循環型都市宣言」の発起人となり、第一号都市として署名しました。国内のみならず、海外都市とも連携しながら、新たな都市モデルを作ろうとしています。
本記事では、横浜市がどのように市民と協働しながら循環型都市への移行を実現しようとしているのかをお伝えします。その精神を体現する事業として、環境や社会に貢献する市民活動を発信するプロジェクト『地球1個分で暮らそう STYLE 100(以下、STYLE 100)』を取り上げ、市の担当者と活動の実践者たちにお話を伺いました。
横浜には実際にどんな市民がいて、どんな取り組みや活動が生まれているのか──世界に誇る「横浜の市民力」の真髄に迫ります。
行政がつなぎ、光を当てる。市民の熱意を広げる『STYLE 100』
横浜市が市民や企業の活動に込められた想いや熱量にスポットライトを当て、発信し、共にグリーン社会実現への輪を拡げていく。その精神の現れである事業が、環境や社会に良い市民や企業・団体の活動を「横浜スタイル」として発信するプロジェクト『STYLE 100』です。

『STYLE100』ウェブサイト。取材形式で市内の様々な取り組みを紹介している
『STYLE 100』では、脱炭素、生物多様性、循環型経済の実現につながる環境に良い取り組みを行う市民の活動を紹介。これまでに40を超える取り組みを紹介してきました(2026年3月時点)。実践する市民の活動を可視化することで、見る人に「自分もやってみたい」という刺激や、「こういった活動が環境の維持向上につながるんだ」という気づきを与える。さらにSTYLE100を軸とした新たなつながりやアクションを生み出すなど、取り組みのさらなる発展を後押ししています。
プロジェクトを担当するのが、横浜市 脱炭素・GREEN×EXPO推進局 GREEN×EXPO推進課の岩下健さんと故長井史さんです。

(左)岩下健さん(右)故長井史さん
──「STYLE100」は、どのような経緯で立ち上がったのでしょうか?
岩下さん「横浜市は、2026年2月現在策定中の中期計画(2026ー2029)素案で、循環型都市への移行を掲げ、持続可能な社会を作るための取り組みをさらに進めようとしています。しかしそれは、行政からの一方通行の発信やお願いだけで実現できるものではありません。
一方で、実は市内にはすでに環境や社会を良くする素敵な取り組みを日ごろから精力的に行っている市民や企業の皆様がたくさんいます。そこで、それらの活動に光を当てて可視化し、取り組みの輪を広げながら環境アクションのムーブメントを作っていくと良いのではないか──そんな発想から、この事業は始まりました」

岩下健さん
──まさに、横浜の強みである「市民力」を活かす仕組みですね。
故長井さん「多くの人が、『地球に優しい暮らしは頑張ってやる特別なもの』といった印象を持っているのではないかと思います。でも、これからは地球に優しい暮らしが当たり前の社会になる必要があると思っていて。ですからSTYLE100では、市民の皆様にとって親しみやすい取り組みに光を当てることで、地球に優しい暮らしを身近で当たり前のスタイルとして広げていきたいと思っています」
岩下さん「加えて、すでに取り組みを行っている人たちに、自分たちの活動が実は環境や社会にとって大きな意義があることなのだと気づいてもらうことも、この事業の目的です。その気づきを積み重ねて広げていくことで、地球に優しい暮らし方が街の文化として醸成されていくのではないかと考えています」
──「STYLE」という言葉には、取り上げる市民の活動がこれからのライフスタイルになっていく、といった意味合いが込められているのですね。
故長井さん「まさに、ライフスタイルのようなイメージです。また、『これが横浜のあり方だ』と一つに決めてしまうのではなく、いろいろなスタイルがあるという意味を込めて『100』という数字で表現しています。それが今、最終的には100個の取り組みを紹介しようという、私たちの目標にもなっています」

故長井史さん
水源林保全からゴミ“釣り”まで。型にはまらない「横浜らしさ」
──実際に、STYLE100ではどのような事例を取り上げているのでしょうか?
故長井さん「発信したSTYLEに触れた人が、『自分も取り組んでみたい』『明日から始めたい』と思っていただけるような、生活に身近な取り組みをメインに発信しています。
また、“横浜らしさ”が伝わる取り組みであることも重視しています。横浜と言えば、みなとみらいのような海沿いの都市部や商業地が最も注目されがちですが、実は市内には多くの森林公園や、農業が根付く里山の景観も残っています。一般の方が思い描く『港町・横浜』のイメージとは異なる側面も含め、多様な横浜らしさが伝わる取り組みに着目して選んでいます」
岩下さん「最初は自分たちでどのような取り組みがあるのかを探していましたが、今ではウェブサイトのSTYLE募集フォームからの応募や、取材した方から『周りにこんな活動もあるよ』とご紹介いただいたものを取り上げることも増えてきました」
──これまでの取材の中で、印象に残っているエピソードはありますか?
岩下さん「横浜の水源林がある山梨県の道志村で、ボランティアの方々が毎月現地に足を運んで林の手入れをされている活動が印象に残っています。『将来の子どもたちのために、自分たちが使う水を自分たちで守る』という強い想いに、非常に感銘を受けました」
故長井さん「私は、商業施設の集まる横浜駅周辺のエリアマネジメントをされている方々が行っている『マグネットフィッシング』の取材が印象に残っています。強力な磁石で川底のごみを釣り上げる清掃活動なのですが、私たちが取材した時には、なんと自転車が5台も釣れたんです。清掃活動に遊びの要素を加えることで、活動への意識が『やらなきゃいけないこと』から『楽しいこと』に変わっていく──そんな瞬間を実感できました」

道志村でのボランティア活動の様子。一般の方々が活動しやすいよう、安全面に配慮されている / 出典:横浜市「地球1個分で暮らそう STYLE100」

マグネットフィッシングの様子。横浜駅近辺の街中で行われ、道行く人にもインパクトを与えた / 出典:横浜市「地球1個分で暮らそう STYLE100」
──多様な市民が暮らす横浜だからこそ、その人たちが混ざり合うことでの面白さもあるかもしれませんね。
故長井さん「そうですね。例えばあるプロジェクトでは、数年前に横浜に移住してきた外国人の方も一緒に活動をされていました。外から来たからこそわかる横浜の魅力や課題があり、そうした人の想いが長く横浜に住んでいる方と重なり合って、新しいスタイルが生まれている。これは、多様な人がいる横浜の特徴だと思います」
岩下さん「大企業や大手地銀が市内に多数あり、そうした主体が地域や市民とのつながりを大切にし、協働していることも横浜の特徴だと思います。例えば、銀行が主体となって開発した環境教育プログラムの中で地域企業のプロジェクトを題材として扱い、市内の小学校で展開した事例もありました」
──事業を進める中で、横浜の「市民力」をどのように感じていますか?
故長井さん「担当者としての個人的な意見ではありますが、横浜の方は横浜という街にすごく愛着を持っていて、『街をもっと良くしたい、守っていきたい』といった純粋な想いから活動が生まれてきているように感じます。そうした想いに共感が集まり、その輪が広がって長く続いている取り組みが多い印象です」
岩下さん「市民自身の行動力でネットワークをつくり、新しいSTYLEを生み出していく姿は、本当に素敵だなと感じます。また、都市部だけでなく、自然や里山を守ろうとしている市民がたくさんいることも、横浜の魅力だと感じています」

市庁舎の一角で2025年に行われた、STYLE100企画展示「地球1個分の暮らし展」
横浜の「市民力」とは何か。文化・自然・教育の現場を歩く
市民一人ひとりが抱く「横浜が好き」という想いと行動力。そうして市内に点在する実践を、『STYLE 100』という傘のもと、つなぎ、その輪を世界にも広げていく。市民力を軸とした、横浜らしい循環型都市の未来が見えてきました。
では、そんな横浜には、実際にどんな市民がいて、どんなプロジェクトが生まれているのでしょうか。後編では、『STYLE 100』に掲載されている数多くの実践者の中から、文化、自然、教育の3つの視点で、その活動の現場をご紹介します。
街を愛し、つながり、育む。「市民力」で作る循環型都市横浜の物語【後編】(公開後リンク追加)
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Select photography: Chikako Togo

