思い出を未来の使い手へつなぐ。「旅する花瓶」に学ぶ、豊かな暮らしのこれから【イベントレポート】
- On 2024年12月6日
Circular Yokohamaでは日ごろより、「循環を、あそぼう!」をテーマとし、循環型ライフスタイルを地域に浸透するための様々な活動を展開しています。活動拠点である横浜市保土ヶ谷区の「qlaytion gallery」では、本のシェアリングサービスやリユースびんの販売・回収、地域の方から持ち込まれる素材を活用したアップサイクルワークショップなどを通じて、物質的な資源の循環と、地域の人々のつながりやアイデアの循環を掛け合わせたまちづくりに取り組んでいます。
この取り組みをqlaytion gallery周辺から横浜市内へと拡大していくため、Circular Yokohamaでは同市栄区の「UCHISOTO CAFE」とコラボレーションして、ワークショップ「循環する花瓶を使って、木と花のブーケをつくろう」を企画しました。これは、横浜市内で集めた使い終わった花瓶に再び命を吹き込み、「花瓶を通じた資源循環」を提案するユニークな取り組みです。
本記事では、当日の模様をお伝えするとともに、地域を旅する花瓶がもたらす豊かな暮らしの形を描き出します。
ウチとソトがつながる地域の仕組みに学ぶ、豊かな暮らし
イベントが行われた2024年10月20日は、秋の訪れを感じさせる肌寒い日でした。会場であるUCHISOTO CAFEには総勢9名の参加者が集い、同カフェのコーヒーを片手にワークショップを行いました。
UCHISOTO CAFEは、みどりを通じたコミュニティ形成に力を入れている石井造園株式会社が運営するカフェです。造園の事業を活かして豊かな暮らしを実現するため、日頃より地域の方々を巻き込んだオリジナルの活動を展開しています。
例えば、カフェのお庭の植栽。普段は造園屋さんが仕事として施工して仕上げるところ、あえてイベント形式をとり、近隣の子どもやその保護者とともにみんなで芝を張ったり花を植えたりしているそうです。普段自然と戯れる機会の少ない子どもや土いじりに慣れていない大人でも、プロの造園屋さんの話を聞きながら作業しているうちにみどりに興味を持つようになり、「自分が植えたお花は咲いたかな?」と定期的にカフェを訪れて、みどりについて話をする時間が増えるのだといいます。
このように、カフェ事業を通じて地域の人々から愛されながら、ウチ(暮らし)とソト(みどり)をつなげていくUCHISOTO CAFEの取り組み。今回のワークショップもその一部となることを目指してデザインしました。
ワークショップの講師は、庭と庭を眺める生活環境を再考するブランド「5%Garden」の皆さんです。5%GardenとCircular Yokohamaは、これまでにもルミネ横浜での「YOKOHAMA CIRCULAR DESIGN MUSEUM」の共同出展や、ワークショップ「ロスフラワーと間伐材で壁掛けを作ろう!」でのコラボレーションを通じて、植物をテーマとする循環型のライフスタイルを模索してきました。
この度の「循環する花瓶を使って、木と花のブーケをつくろう」では、UCHISOTO CAFEの店内装飾に使われていた植物を活かしたり、同カフェのお庭に植えられている植物を直接剪定したり、この場所だからできる特別なフラワーブーケづくりに挑戦しました。
イベントの前半では、5%Gardenの皆さんから植物の基礎知識を造園や花屋の視点からご説明いただきました。
集まった40個の花瓶。それぞれが持つ、世界にひとつの物語
次は、本イベントのハイライト。地域の皆さんが寄付してくださった花瓶に隠されたストーリーを学ぶ時間です。
今回は、おうちに眠っていたり使わなくなったりした花瓶を地域の方々にご提供いただくため、イベントの1か月前から、qlaytion galleryとUCHISOTO CAFEに花瓶の回収ボックスを設置しました。
限られた回収期間かつ初めての取り組みでありながら、あわせて40個の花瓶が集まりました。性別を問わず20代から80代まで多くの方が、本イベントが目指す地域内のつながり構築や資源循環のコンセプトに共感して、様々な思い出とともに回収拠点を訪れてくださいました。
回収ボックス横に用意したメッセージカードには「旅先で記念に購入しました」や「花道家の母から譲り受けた花瓶です」など、これまでの持ち主が語る花瓶にまつわる温かな物語が添えられています。
イベント当日は、花瓶の色やデザインだけではなく、メッセージカードに記された「モノ」がもつストーリーにも注目して、参加者それぞれがお気に入りの花瓶を選びました。単なるモノの再利用ではなく、人と人とのつながりを感じられる時間でした。
花瓶と植物の出会いが生み出す、ワクワクするような循環型の暮らし
お気に入りの花瓶を見つけたら、それぞれの花瓶に合わせた植物の活けこみを考えます。
様々な場所から集まった花瓶たちは、色も、形も、大きさも、ひとつとして同じではありません。5%Gardenの皆さんからは、様々なアドバイスが飛び交います。
「背の高い植物があるときは、他のお花と組み合わせて段差をつくるようにすると映えますよ」
「花瓶が3つあったら、1つを派手にしあげれば、他の2つはシンプルな活けこみで十分です。複数のブーケに分けてバランスやデザインを考えながら飾るのも楽しいですよ」
「木の実やりんごなどお水が必要ないものは、花器に入れないでそのまま置いておく方法もあります。お花に限らずなんでも飾ってみてください」
参加者は、それらのアドバイスをもとにこだわりと創意工夫でオリジナルのフラワーブーケを作りあげました。
資源循環をテーマにしつつも、環境活動の押し付けではなく、一人ひとりがワクワクしながら取り組むことができる具体的なアクションを体験していただくことができました。
資源循環の未来を、花瓶とブーケに託して
それぞれのフラワーブーケを花瓶に活けたら、参加者全員で「自分だけの」花瓶とブーケに込めた想いを共有します。
参加者の中には「お花を飾るのは初めて」という方もおり、暮らしの中にみどりを取り入れる楽しさやその意味を発見できたようです。ほかにも、「お花を飾るのは好きだけれど、花瓶に合わせた活け方は考えたことがなかった」、「これまでお花の大好きなおばあちゃんが使っていたという花瓶を選んだので、その想いをつなげたい」といった声が聞こえました。
こうして、誰かの元で使われなくなった花瓶が新しい持ち主の手に渡ることで、捨てられるはずだったモノが大切に扱われ続ける資源の循環が生まれました。また、花瓶のもつストーリーを通じて地域住民同士の交流が生まれ、普段は知り合うことのなかった人々がつながりました。
自分が楽しいと思うことや好きなことをあそぶように体験していたら、暮らしがより循環型に近づき、同時に資源の大切さも理解することができる。
──Circular Yokohamaが目指すサーキュラーエコノミーを実現するうえで、今回のワークショップは「小さな循環」が地域にどんな影響を生み出すのかを可視化する機会となりました。
開催後記
本イベントでは、活躍の機会を待って眠っていた花瓶たちが、新たなストーリーをまとい新たな持ち主の元で活用される未来を描くことができました。同時に、地域の中で資源を再発見し、次世代に引き継ぐサーキュラーエコノミーの実践例として、多くの示唆を提供しています。
大切な人や記念の瞬間にお花をもらったり、日常のふとしたタイミングで「お家にお花を飾ってみようかな」思ったり。きっと誰もが、生活にお花を取り入れるきっかけに出会ったことがあるはずです。しかし、もしも家に花瓶がなかったら、そのきっかけを活かすことができません。
せっかくならば、お花を飾る花器にもこだわりや特別なストーリーをもってほしい……。
そんな想いから生まれた「旅する花瓶」のコンセプト。参加者の皆さんにとって、花瓶が単なる道具ではなく、地域や家族とのつながりを象徴する「特別な宝物」となったことを願います。
「サーキュラーエコノミー」が、「リサイクル」にとどまらず、人と地域をつないで豊かな暮らしを実現するための表現として愛されるよう、Circular Yokohamaでは今後も多様な循環を通じたまちづくりに取り組んでまいります。
写真提供:雨木稜太(一部除く)
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【参照ページ】Instagram @UCHISOTO_CAFE
室井梨那(Rina Muroi)
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