
「Y- SDGs認証」取得企業と共に学ぶ、横浜におけるサステナブル・ビジネスデザインの最前線【イベントレポート】
- On 2025年8月7日
Circular Yokohamaでは、SDGsの達成に向けて多様な主体をつなぎ、地域課題の解決に導くための中間支援組織であるヨコハマSDGsデザインセンターに、運営主体の一社として参画しています。
同センターにおける取り組みの一環として、2024年12月5日〜2025年1月16日に、社会人向けの対面講座「Yokohama Sustainable Business Design School(ヨコハマ・サステナブル・ビジネスデザインスクール)」を神奈川大学とともに開催しました。
フィールドワークを含む全5回で構成された本スクールは、座学を神奈川大学みなとみらいキャンパスで実施し、社会人から神奈川大学の学生を含む計13名が参加しました。
講師は、「Y- SDGs認証」取得企業である横浜市内のSDGs先進企業から計4名を迎え、参加者に対し実践的な知識や数々の事例を紹介しました。フィールドワークでは、環境への配慮に取り組む工場を実際に訪問し、現場を体感しながら学ぶ機会を提供しました。
2か月間に渡る本講座は、全体満足度100%を実現し、参加者にとって今後の事業・取り組みに対して貢献できる取り組みになりました。
本記事では、各回の様子をレポートします。
講義概要
開催日:2024年12月5日 ~ 2025年1月16日(全5回)
時間:16:00~19:00 ※フィールドワークのみ、13:00~18:00
開催場所:神奈川大学みなとみらいキャンパス「KUポートスクエア」
主催:神奈川大学
共催:ヨコハマSDGsデザインセンター
Y- SDGs認証について
Y- SDGs認証とは、市内外の企業・各種団体・NPO法人・市民活動団体などのSDGs達成に向けて積極的に取り組む事業者を、横浜市が認証する制度です。持続可能な経営・運営への転換、新たな顧客や取引先の拡大、さらには、投資家や金融機関がESG投資等の投融資判断への活用につなげることを目的に、ヨコハマSDGsデザインセンターが運営しています。
本認証制度に関する詳細は、ヨコハマSDGsデザインセンターのページをご確認ください。
「Y- SDGs認証」取得企業の取り組むサステナブル・ビジネスデザイン
全5回で実施した本講座は、全回を通してハーチ株式会社の加藤が解説を担当しました。
第1回では、サステナブル・ビジネスデザイン概論のインプットを実施。
事業を通じて地域が抱える課題解決に取り組むための工夫や、環境・社会といった地球規模のインパクト創出と事業の両立や統合について、事例を交えながら紹介しました。また、持続可能な未来に向けたビジネスデザインと、脱炭素を前提とする再生可能エネルギーへの移行の間に生じるジレンマについても解説し、参加者の課題意識に語りかけました。

ハーチ株式会社・加藤による解説の様子

講義の様子
第2回講座:環境編(脱炭素・循環経済・自然共生)
第2回の講座では、環境課題解決に向けた3大トピックとなっているカーボン・ニュートラル(脱炭素)、サーキュラーエコノミー(循環経済)、ネイチャーポジティブ(自然共生)の概念を学びました。
講師には、太陽油脂株式会社の東山氏と株式会社kitafukuの松坂氏が登壇しました。
東山氏は、創業から78年になる太陽油脂の歴史における脱炭素の取り組みを紹介。そして、同社における人と環境に優しい事業を支える、合成界面活性剤を使わない石けんづくりのこだわりを解説しました。
松坂氏は、kitafukuが開発を行う廃棄となるモルト粕を混ぜたアップサイクル再生紙のクラフトビールペーパーについて解説。ビジネスの根本にある「誰のどんな課題をどのように解決しているのか」という問いを、参加者を交えて議論しました。

太陽油脂株式会社・東山氏(左)と株式会社kitafuku・松坂氏(右)
第3回講座:社会編(多様性・公正・包摂)
「社会」がテーマの第3回講座では、紛争や格差といった社会課題がより顕在化する中で、ビジネスにおいても日々重要性が高まっている「多様性」「公正」「包摂」の概念について学びました。また、国内外における先進事例や具体的な実践から、事業や組織にどのようにして前述のような概念を取り入れていくかを考えました。
講師には、株式会社An-Nahalの品川氏、石井造園株式会社の石井氏を迎えました。
株式会社An-Nahalは、法人向けにダイバーシティ&インクルージョン推進に向けたコンサルティング・人材育成事業を提供する企業です。。品川氏は、多様性・公正・包摂の概念についての解説から始まり、国内外の企業による取り組み事例や、昨今の世界情勢について紹介しました。
石井氏は、CSRの取り組みや地域に根ざした企業の社会貢献のあり方について説明しました。「売上は未来からの期待値」、「利益は、経費を引いた残りではなく、お客様からのありがとう量だ」と述べました。

株式会社An-Nahal・品川氏

石井造園株式会社・石井氏
第4回講義:市内フィールドワーク
第4回ではフィールドワークを実施。“Y-SDGs”認証にて Supreme(最上位) を取得している株式会社大川印刷本社の戸塚工場を訪問しました。
見学の前後には、大川氏からサステナブル・ビジネスデザインにおける経営者の心得について学びました。
大川印刷は石油系溶剤を全く含まないインクを使用し、環境負荷の軽減に寄与しています。このインクへ変更したことでのメリットは、環境負荷軽減だけではないと話します。
大川氏「石油系溶剤不使用のインクは、インク特融のにおいが少なく、工場内で働く従業員の健康を守ることにもつながります。環境に正しい取り組みが、従業員にとってもより良い職場環境を提供することにつながっています」

株式会社大川印刷・大川氏
第5回:サステナブル・ビジネスデザイン実践
最終回となる第5回では、第1〜4回までの学びを踏まえ、参加者それぞれが、自社事業を題材にサステナブル・ビジネスモデルを描くプレゼンテーションを行いました。

参加者がプレゼンテーションをする様子
プレゼンテーションでは、例えば、既存の空き家や保養所、旅館を改装し、全国ネットワークの会員制エコホテルに改装するというアイデアや、新規事業の売上低下による人員削減の課題に対し、モノからコトを提供するビジネスに変換するアイデアなど、参加者それぞれの個性が溢れる発表が行われました。
本プレゼンテーションを通じて、参加者はサステナブルなビジネスについてこれまで感じていた課題と向き合い、それをどのように解決できるのかを具体的に検討するきっかけを得たのではないでしょうか。

参加者同士のディスカッションの様子
開催後記
本講座の参加者には、企業のサステナブル担当者に加え、マーケティング統括部の担当者や経営企画担当者、入社して数年の若手の会社員、そして学生など多様な人々が集まりました。
参加者からは「定期的に開催してほしい」「実践的かつフィールドワークもあり体系的に学ぶことができた」などの声が聞こえ、ヨコハマSDGsデザインセンターの知見や経験が社会で活躍する事業者の皆さまの力になっていることを実感しました。
また、参加者の学びに対する高い熱量と前向きな姿勢には、講義を行ったY-SDGs認証事業者の方々も感激の言葉を述べ、各講座終了後には活発な意見交換が行われていました。
本講座をきっかけに運営スタッフ・講師・参加者といった立場に関わらない新たなつながりが生まれたことも収穫のひとつです。参加者同士では、地域内の他のイベントでの交流につながったとの声もあり、講座開催の範囲にとどまらない貴重なネットワークを提供することができました。
サステナビリティやサーキュラーエコノミーの概念を実践する企業や団体が増えているなかで、実践者同士で互いの声を聞き、活動を見て、学びあうことの重要性を再認識した本講座。
ご参加いただきました皆さま、講師の皆さま、神奈川大学の皆さま、誠にありがとうございました。
※本企画は、Circular Yokohama(ハーチ株式会社)の企画運営によって実施しました。
※本記事は、ヨコハマSDGsデザインセンター公式サイトからの転載記事です。
【参照記事】「Y- SDGs認証」取得企業と共に学ぶ、横浜におけるサステナブル・ビジネスデザインの最前線
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Circular Yokohama Editorial Team
