緑園都市のまちづくりから考える、サーキュラーエコノミーPlusが目指す地域のあり方【体験レポート】
- On 2021年6月7日
コロナ禍で変わる私たちの働き方。リモートワークやテレワーク、オンラインミーティングなど、働き方の変化を象徴する新しい言葉も数多く生まれています。政府が提唱する「新しい生活様式」の概念のなかで、今後私たちの働き方はどのように変化していくのでしょうか。
横浜市が掲げる「サーキュラーエコノミーPlus」のビジョンにも、「パラレルキャリア~会社や学校にとらわれないもう一つの学び方・働き方~」とあるように、サーキュラーエコノミーへの移行においても働き方の変化、多様化は重要な要素の一つです。それは、経済の仕組みが変われば企業のありかたも変わり、企業のありかたが変われば組織のありかたも変わる。そして組織のあり方が変われば、私たち一人ひとりの働き方も変わるからです。
そこでCircular Yokohamaでは、横浜市泉区を拠点に活動する緑園リビングラボとの協働により「サーキュラーエコノミー時代の新しい働き方」をテーマにしたフィールドワークを開催しました。
本記事では、2021年2月13日に緑園都市にて行われた同イベントの模様をお届けします。緑園のまちが抱える働き方や暮らし方に関する地域課題とその解決策を考えてみましょう。
※本イベントは、Circular Yokohamaが、一般社団法人YOKOHAMAリビングラボサポートオフィス、NPO法人横浜コミュニティデザイン・ラボと共同で企画運営するCircular Economy Plus School(サーキュラーエコノミープラススクール)のプログラムです。
緑園リビングラボについて
緑園リビングラボは、地域における多様かつ包摂的な働き方やパラレルキャリアを推進するリビングラボです。
同リビングラボで代表を務める野村美由紀(のむら・みゆき)さんは、特に女性や子育て世代のキャリア支援に力を入れて活動しています。
このコロナ禍では、女性を主役にした助け合いプロジェクト「YOKOHAMAガーゼマスクships」や、コロナ禍で就職活動を行う学生をサポートするオンラインセミナーなどの活動を展開しています。
今回のイベントでは、緑園リビングラボが目指す多様な働き方の実現に向けて、地域が抱える働き方に関する課題の解決を、サーキュラーエコノミーの観点から議論しました。
緑園のまちあるき
晴天に恵まれたイベント当日。相鉄緑園都市駅に集った、総勢16名の参加者。サーキュラーエコノミーや横浜市内のまちづくりに興味を持つ人や、緑園都市のまちに暮らしや学びの拠点を持つ人、横浜のまちづくりに長年携わる人や緑園リビングラボで活動する人など、年代も生い立ちも異なる人々が集まりました。
自己紹介の後は、緑園都市がどのようなまちなのか、そしてどのような課題があるのかをそれぞれが考察する時間です。緑園リビングラボ代表の野村さんにご案内いただき、実際に緑園のまちあるきを行いました。
緑園のまちの開発が進められた昭和後期には、住む場所と働く場所は少し離れている方が生活の質が高まると考えられていました。そのため、緑園はいわゆる「ベッドタウン」として、人々の暮らしを支えるまちとして発展してきました。その後、平成、令和と時を重ねると、人々の働き方や暮らし方が多様化。それと同時にまちの人口の高齢化も進んでいきます。
さらに、このコロナ禍で新たな地域課題が浮かび上がってきた、と野村さんは言います。
「テレワークやリモート授業の導入を受けて、『住む場所』としての機能しか持っていなかった緑園のまちで、仕事をしたり勉強をしたりする人が増えました。休日も、これまでは都市に出て過ごすことができましたが、移動の制限によって地域内で過ごす必要が出てきたのです。しかし、緑園には仕事をしたり勉強をしたりできるカフェやレストランも少なく、休日のレジャーを楽しむことができる場所もほとんどありません。人々の暮らし方が変化しているということを強く実感する機会になっています。」
コロナ禍で生まれたまちに対する新たな需要。これからの時代に合わせたまちづくりを進めようと、緑園リビングラボは地域住民やまちづくりを進める企業との連携を一層大切にしています。
緑園の「学び・働き・暮らし」を考える地域課題解決アイデアソン
まちあるきを終えた後は、緑園のまちが抱える課題を解決するためのアイデアを出し合うディスカッションを行いました。
初めに、それぞれが目にしたまちの状況を「学び・働き・暮らし」の3領域に分け、考えうる地域課題やその原因を洗い出します。
次に、参加者は「学び・働き・暮らし」の3つのグループに分かれ、それぞれのテーマにあった課題解決策をサーキュラーな視点から話し合います。
話し合いの後は、緑園リビングラボの皆さんやまちづくりに携わる企業の皆さんへ向けて、各グループからプレゼンテーションを行いました。
「学び」チームの話し合いは、実際に緑園にある大学や中学校へ通っている学生が中心となり、多様な年代の人々が集うことができる施設を設置するというアイデアを発案しました。
施設では、朝は高齢者を中心にワークショップ等の開催に活用し、昼間〜夕方は学生が勉強をしたりイベントをしたりできるスペースとして開放、そして夜には仕事帰りの大人が食事をできる場として提供、というように時間軸によって異なるターゲットを想定します。それにより、スペースの活用に無駄がないうえ、多世代交流も促され、人の循環を生み出す仕組みです。
続いて「働き」をテーマに話し合ったチームでは、若い企業家を誘致することでまちの内と外の人がつながりあうモデルを考案しました。
例えば緑園にある私立大学を活用し、スタートアップ企業によるビジネス講座を開講することで、まちの内の人々は新しい技術や知識を取り込むことができます。一方、まちのパブリックスペースをコワーキングスペースやカフェ・温泉施設等として開放することで、まちの外から来る人々にも地域の良いところを楽しんでもらうという、双方にとって利益のあるまちづくりの形です。
最後に、「暮らし」について話し合いを行ったチームは、緑園のまちの開発の歴史を軸にまちのあり方について考えました。
これまでの緑園のまちに「ない」ものを要素としてあげることで、いま何が必要とされているのかを洗い出しました。そして、商店街を作り、そこでイベントを開催したり、まちの特産品を生み出したりすることで、まち全体に活気を生み出しながら人と人が繋がることのできる地域を目指すという提案が行われました。
イベントの終わりに、緑園リビングラボの野村さんは各グループの発表を受けて、「緑園のまちの外の人々の視点で丁寧な地域課題の考察をしていただく機会はとても貴重です」と参加者への感謝を述べました。
今回提案されたアイデアが緑園リビングラボやまちづくりに携わる企業を通して今後のまちづくりに反映されていくことを願って、本イベントは幕を閉じました。
編集後記
「かつては、住む場所と働く場所は少し離れている方が生活の質は上がると考えられていたが、コロナ禍を経て変わるこれからの暮らし方では、一つの地域に住うことと働くことの両方の機能が求められている。」
という考察。そして、その両方がバランスよく整っていないことで感じる緑園のまちの暮らしづらさ。同じような課題に直面している地域は、緑園のまちだけではないはずです。
今緑園のまちが模索している、「地産地消」や「地域循環」、「地域経済」といったローカル視点のサーキュラーエコノミーらしいキーワードを取り入れると同時に、多様な人々の幸せを叶える暮らしの実現という「人」に寄り添ったまちのあり方は、まさにサーキュラーエコノミーPlusが理想とする地域の姿の一つではないでしょうか。
これを実現に近づけることで、他の地域も学ぶことが多くあるはずです。今後の緑園のまちづくりから、目が離せません。
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【関連サイト】緑園リビングラボ
Circular Yokohama Editorial Team
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