都市と地方を再エネでつなぐ。まち未来製作所の地域循環サービス「グッドアラウンド」
- On 2021年1月8日
横浜市中区に拠点を置く株式会社まち未来製作所は、横浜市と連携協定を締結し、Zero Carbon Yokohamaの実現に向けた再生可能エネルギー好循環モデル「グッドアラウンド」を提供しています。このサービスは、日本国内で初となる再生可能エネルギー(以下、再エネ)の都市間流通による地域活性化モデルです。
グッドアラウンドのサービスについて
グッドアラウンドは、再エネ発電所のある自治体からの依頼を受けて、地域活性化を希望する発電所の賛同のもと、再エネを”地産地消”と”都市への輸出“に分割します。グッドアラウンドを運用して得た収益は”地域活性化資金”として立地自治体と協議の上で地元へ還元します。
2020年10月に政府が発表した2050年の温室効果ガス排出ゼロの目標に向け、国内の再エネ発電事業は今後ますます大規模化、大量導入に向かうことが予想されており、再エネ発電事業者は地域コミュニティや地域の自然との共生を一層重要視し始めています。一方、RE100*加盟企業をはじめとする再エネの使用者側も、再エネの持つ環境価値だけでなく発電所の運営者や地域貢献の側面なども含めた電力の持つストーリーを評価し、フェアトレードでの電力購買を望むケースが増えています。
*事業における使用電力を100%再エネで賄うことを目指す企業が加盟する国際的なイニシアティブ
株式会社まち未来製作所では2016年の創立以来、地域や電力需要家、発電事業者、投資家、小売事業者のメリットを再配分し、フェアでサステナブルなサービスの設計に取り組んでいます。この度発表された新サービス「グッドアラウンド」では、再エネによる地方と都市の好循環の創出と環境ビジネスに関わる全てのステークホルダーの共生を具体化し、脱炭素社会の実現と地域活性化に貢献することを目指しています。
今回、Circular Yokohama編集部では株式会社まち未来製作所の代表取締役 青山英明(あおやま・ひであき)さんにお話を伺いました。
地方も都市も、みんなをハッピーにしたい
もともと青山さん自身が横浜で暮らし、ぜひ横浜で何か事業を立ち上げたいと考えていたことが、この地でまち未来製作所をスタートさせたきっかけだったそうです。
「このグッドアラウンドの構想も、2016年に会社を創業した当初から考えていたものです。地方における従来の再エネ発電事業では、大都市の企業が地方に発電所を造って、そこで発電した電気をまた都市に送って都市で消費する、というようなモデルが多いです。しかしこの仕組みでは、地方の土地は活用されますが、その土地の人々や社会にとっての恩恵を十分に得られないと感じたのです。」
「そこで、グッドアラウンドでは都市と地方、エネルギー会社と地元の企業それぞれにとって損がなく、みんなが少しづつハッピーになれるそのバランスをフェアな形で実現することを目的に、それを横浜からどのように実現できるか、数年間具体案を練ってきました。」
電気を通して地方と都市をつなぐ
グッドアラウンドの仕組みは、まず地方で発電された電気を電力会社が丸ごと買い取ります。次に、電気をまち未来製作所が再び買い戻し、その買い戻した電力を細かく切り分けてその電気の産地である地方や、消費地となるそれぞれの都市へ必要な分を分配していきます。その最大の特徴は、これまでの再エネ事業が抱えていたある課題へアプローチしている点だといいます。
「これまで、地方で作られた再生可能エネルギーは他都市との連携がなければ使用先がなく、地域で使いきれなかったエネルギーが無駄になっていました。しかし、再エネを効率よく使用するためには、発電技術やそのための土地・設備だけではなく、電気を作る人と使う人が長期的に連携できる仕組み作りが必須なのです。都市に拠点をおきながら地方でエネルギー事業を展開する企業はあまり多くないこともあり、我々は都市にある企業のメリットを活かして地方へ事業を広げ、電気を通して地方と都市をつなぐ役割を担おうと考えたのです。」
商店街や小売店にも再エネを
「グッドアラウンドのサービスを開始してから、それに賛同してくださる仲間が増えています。現在は東北の12市町村で生産された再エネ電力を、グッドアラウンドの仕組みを通して横浜市内のビルやオフィス、工場などに供給しています。電力の需要家である横浜市内の方々からも『再エネを買いたい、使いたい』という声が届いていて、特にRE100を宣言している企業からは注目を集めていると感じています。これからは、RE100の宣言をはじめ、すでに様々な取り組みを始めている方々のみならず、ローカルな商店街や小さなお店の方々にもどんどん再エネを使っていただきたいと考えています。少しずつ足を動かして、横浜市内でもつながりを作っていきたいです。」
電気のローカルな循環を実現させたい
最後に、青山さんに横浜に拠点を置く企業としての今後の展望を伺いました。
「電気に関して、横浜は需要家という役割が大きいと思われがちですが、実は発電所もたくさん持っています。いずれは、横浜市内で電力の地産地消を実現させ、ローカルな循環を生み出すことができたら良いと考えています。そしてそこで生み出されたお金や人々のつながりを地域の街づくりや雇用の活性化に活かすことで、地域としての横浜全体を一層盛り上げていきたいと考えています。」
「また、この度の横浜市との連携協定締結も活かし、官民連携で取り組みを進めていきたいです。横浜は人口の多い大都市ですが、情報がそれぞれの企業や学校、そして個人にまできちんと行き渡るようにしたいと思っています。電力だけでなく様々な分野のノウハウを集めてみんなで地域をより良くしていきたいです。」
取材後記
「横浜という大都市にいるからこそ、地方と共にできることがある」という青山さんのアイデアはとても新鮮なものでした。また、エネルギーの生産だけではなく、エネルギーを効率的に使用するための仕組みづくりも課題の一つであることを教えてくださいました。
日本政府が宣言した2050年のカーボンニュートラル実現に向け再エネへの移行を宣言する企業が増えるなか、新型コロナウイルスの流行によって浮き彫りになった地域コミュニティの重要性は、電力供給においても同様のことが言えるのではないでしょうか。グッドアラウンドの仕組みを通じてカーボンニュートラルの実現に貢献し、地域の活性化にもつなげたいという方は、ぜひまち未来製作所のみなさんと共に電力の好循環に取り組んでみてはいかがでしょうか。
【関連記事】東北との再エネ都市間流通による地域活性化モデル、新たに横浜市内事業者へ供給を開始
【参照サイト】ゼロカーボン・ヨコハマ・グッドアラウンド連携事業HP
【参照サイト】株式会社まち未来製作所 公式ホームページ
【参照サイト】RE100
【参照記事】国内初 再エネ好循環モデル「グッドアラウンド」サービス提供開始
【参照記事】横浜市「グッドアラウンド」を活用したZero Carbon Yokohama実証事業開始
【参照記事】国内初!再エネ発電由来の電気の利用が東北の地域活性化につながる実証事業を開始~電気をご利用いただく事業者を募集します~
室井梨那(Rina Muroi)
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