前編・国連開発計画(UNDP)フィリピンによる訪日視察ツアーを開催しました【イベントレポート】
- On 2023年8月9日
2023年6月25日〜6月30日、国連開発計画(以下、UNDP)フィリピンが主催するフィリピン主要都市の自治体による訪日視察ツアー「UNDP PHILIPPINES – JAPAN LEARNING EXCHANGE ON CIRCULAR ECONOMY FOR LOCAL GOVERNMENTS(以下、サーキュラーエコノミーツアー)」が開催されました。Circular Yokohamaでは、ツアーの企画を担当し、東京と横浜の2都市へのアテンドを行いました。
本記事では、5日間にわたるプログラムの前半、横浜でのツアーの様子をお届けします。
本ツアーは、Circular YokohamaとZenbirdが共同運営するプロジェクトです。
UNDPフィリピン サーキュラーエコノミーツアーについて
本ツアーは、UNDPフィリピンが主催する「ACE Project(エース・プロジェクト)」の一環です。同プロジェクトは、2022年から2024年の2年間を期間とし、フィリピンが目指すサーキュラーエコノミーの実現に向けたデモンストレーションの機会の創出を目的としています。
また、エース・プロジェクトはUNDPの国際プロジェクトでもある「Climate Promise(気候の約束)」のひとつとしても位置付けられています。
※気候の約束:パリ協定の目標達成に向けて各国が自国の目標や約束を実現するための世界最大のイニシアティブ(UNDPウェブサイトより引用)
今回日本を訪れたのは、フィリピンの省庁、マニラ、ケソン、カローカン、パシッグの4つの地方自治体、そしてひとつの一般企業から合わせて12名と、UNDPフィリピンの企画チーム2名、総勢14名です。それぞれが国、ならびに地方都市や企業におけるサステナビリティやサーキュラーエコノミーの推進担当者で、日本の都市における資源循環や廃棄物の現状を学ぶ目的で参加しました。
目次
1日目:行政を中心に展開する横浜における廃棄物の分別・処理の現状を探る
ツアー初日となる6月25日は、横浜市国際局の協力による表敬訪問とリサイクル施設の見学です。
みなとまち横浜、発展の歴史を学ぶ。横浜市国際局を表敬訪問
はじめに訪れたのは、みなとみらいエリア。
Y-PORTセンター公民連携オフィス内、情報発信・交流・創造拠点「Galerio(ガレリオ)」では横浜市国際局長への表敬訪問を実施。フィリピン地方自治体代表者との交流が実現しました。
その後、ランドマークタワー最上階の展望台へあがり、横浜市国際局担当者による横浜の歴史や都市計画に関する解説を行いました。
塵も積もれば山となる。缶・びん・ペットボトルの分別現場へ
午後は、鶴見区にある2つのリサイクル施設を訪問。
はじめに訪れたのは、横浜市資源循環局が管理する工場です。ここでは、横浜市におけるごみの分別方法の解説と、缶・びん・ペットボトルの分別現場の見学を行いました。
家庭から回収された大量の缶・びん・ペットボトルが流れるベルトコンベア。その脇には人が立ち、手作業で分別が行われています。
工場を進むと、そこには本来捨てる前に除去されるべきラベルとキャップがついたままのペットボトルの大きな塊がありました。正しく分別されていればそのままリサイクルできるはずのペットボトルですが、その多くは効率の良いリサイクルの輪に投入できない状態で収集されていることがわかりました。
まさに、「塵も積もれば山となる」。生活者一人ひとりが、ごみを捨てる瞬間に1秒でも立ち止まって正しい分別に協力することが、結果に大きな違いを生むということを実感できました。
事業系食品廃棄物の循環を支える現場。効率の良いバイオマス燃料の製造とは
続いて、株式会社Jバイオフードリサイクルの施設へ移動。食品廃棄物のリサイクル現場を視察へ訪れました。
ここでは、微生物の働きによって食品残渣をバイオガス化する一連の工程を見学しました。
売れ残りや期限切れ等で発生する食品廃棄物ですが、直接焼却するのではなく、メタン発酵によってバイオガス化し、それを焼却することで電力を得ています。
コンビニやショッピングモール、食品メーカーから排出される食品廃棄物は多種多様です。同施設では微生物の栄養バランスが偏ることのないよう、発酵設備に投入する食品の種類や量を調整することで効率の良いメタン発酵を促しています。
とはいうものの、施設に集められる食品にも偏りがあります。特に、季節によって需要が大きく左右されるものとして、春頃であればバレンタインやホワイトデーで消費が追いつかなかったお菓子類、秋ごろにはアイスクリームなど。
日々バランスを考えながら設備を運用することには難しさもあるようですが、食品廃棄物のリサイクル率向上を目指し、日々取り組んでいるそうです。
循環を遊ぶ多様なアイデアに触れる。YOKOHAMA CIRCULAR DESIGN MUSEUMで交流会
ツアー初日、最後に訪れたのは、Circular Yokohamaの活動拠点である、星天qlay「qlaytion gallery(クレイション・ギャラリー)」。
現在開催中の展示イベント「YOKOHAMA CIRCULAR DESIGN MUSEUM(ヨコハマ・サーキュラー・デザイン・ミュージアム」の見学会を実施しました。
今回は、同ミュージアム出店者の皆さまにもお集まりいただき、フィリピンの視察団と直接の対話を実施。
個人や一般企業など民間によるボトムアップ型のサーキュラーな取り組みに触れる機会の創出を目指しました。
横浜市内での農福連携の取り組みや海洋プラスチックのアップサイクル技術、またユニークな活動をより広く知ってもらうための工夫など、様々なアイデアを交換する時間となりました。
2日目:企業によるサーキュラーエコノミーに資する事業を学ぶ
YOKOHAMA CITY CIRCULAR ECONOMY SYMPOSIUM
2日目は、本ツアーのメインイベントのひとつ「YOKOHAMA CITY CIRCULAR ECONOMY SYMPOSIUM(ヨコハマ・シティ・サーキュラー・エコノミー・シンポジウム)」です。
このシンポジウムは、プレゼンテーションとパネルディスカッションで構成されており、フィリピンの省庁ならびに地方自治体が進めるサーキュラーエコノミーの取り組み発表と、横浜を中心とする日本の企業が進めるサーキュラーエコノミーの事業発表を行いました。
会場は、Y-PORTセンター公民連携オフィス内「Galerio(ガレリオ)」。
新興国における都市課題の解決を通じて海外インフラビジネス機会の創出を目指すYOKOHAMA URBAN SOLUTION ALLIANCE(YUSA)、ならびに横浜市国際局の協力により本会場をお借りしました。
フィリピンの視察団はもちろん、横浜近郊で資源循環の活動に取り組む企業や行政の皆さまをお呼びし、50名を越えるゲストが集まりました。
第一部:プレゼンテーション「フィリピンと横浜のサーキュラーエコノミー」
登壇者(登壇順)
▽冨岡典夫氏(横浜市国際局)
▽ジェロ・オルテガ氏(フィリピン 環境天然資源省)
▽三上裕氏(Y-PORTセンター/横浜市国際局)
▽石田憲生氏(株式会社グーン)
▽窪田恭史氏(ナカノ株式会社)
▽栗原清剛氏(横浜市資源リサイクル事業協同組合)
▽荒井亮介氏(レコテック株式会社)
▽水島文氏(株式会社横浜国際平和会議場)
▽ディエゴ・ルイス・サンティアゴ氏(パシッグ市)
第二部:パネルディスカッション
登壇者(順不同)
▽ヴァネッサ・クレア・ビネラオ氏(フィリピン ケソン市)
▽フェ・バス氏(フィリピン ケソン市)
▽荒井亮介氏(レコテック株式会社)
▽栗原清剛氏(横浜市資源リサイクル事業協同組合)
パネルディスカッションでは、「食とサーキュラーエコノミー」、「共創・パートナーシップとサーキュラーエコノミー」をトピックに議論を行いました。
フィリピンの視察団が初日の施設見学を通して感じたことや、民間企業と行政それぞれの立場からこれからの共創における展望の共有がありました。
各国の文化や法規制の違いから、サーキュラーエコノミーのあるべき姿もひとつではないという議論に、参加者は興味深く耳を傾けていました。
★シンポジウムの様子は、Circular Yokohama公式Instagram ハイライト「UNDP(国連)ツアー」にてショート動画を公開しています。
フィリピンと横浜のつながりを実感する。衣類リサイクル現場を視察
シンポジウムの後は、金沢区へ移動。民間企業によるリサイクルや資源循環の取り組みを視察しました。
初めに訪れたのは、衣類・繊維のリサイクルを行うナカノ株式会社(以下、ナカノ)。
ナカノでは、横浜市内で回収された古着をフィリピンの北西部に位置するスービックの自社工場にて仕分け、再製品化を行っています。
今回見学に訪れた金沢区の工場は、古着の回収拠点となっているほか、スービックで製造された製品の引き受け拠点でもあります。
まだまだ新しい状態の古着が不用品として数多く集められている現状や、それを人の手で一つひとつ仕分けしている様子に驚きの表情を浮かべる参加者が多くいました。
他方、フィリピンへ送られる古着や古布、フィリピンで製品となって戻ってきたウエスや軍手の実物を見ることで、リサイクルがもたらす経済循環をより解像度高く理解することができました。
廃棄物循環のいまを知る。サーマルリサイクルの現場を視察
続いて訪れたのは、同じく金沢区に位置する株式会社グーン(以下、グーン)。
グーンは、木材とプラスチックを中心に廃棄物を回収し、資源としてリサイクルする事業を行っている企業。工場では、回収した廃木材やプラスチックをサーマルリサイクルするための選別や粉砕作業が行われています。ナカノと同じくグーンも、フィリピンのセブ島に自社工場を構えており、日本で培ったリサイクル技術を生かしてフィリピン国内の資源循環にも取り組んでいます。
「リサイクル」とひとくちに言っても、より環境効率の良いリサイクルを実現するためには、丁寧な分別や加工が不可欠であることを学ぶことができました。
編集後記
行政から民間企業、個人まで、多様なセクターとの直接交流が実現した横浜での視察ツアー。
Circular Yokohamaがこれまでに築いてきた貴重なネットワークを活かして組み立てたプログラムを通じて、フィリピンの視察団の方々はもちろん、横浜の皆さまにも価値のある時間を提供できていたら嬉しく思います。
ご協力をいただきました全ての皆さま、ありがとうございました。
記事後編では、東京都にて行われた視察ツアー後半の様子をお届けします。ぜひご覧ください。
【参照サイト】株式会社Jバイオフードリサイクル ホームページ
【参照サイト】YOKOHAMA URBAN SOLUTION ALLIANCE ホームページ
【参照記事】UNDP Philippines Delegates’ journey into Japan’s Circular Economy
室井梨那(Rina Muroi)
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