法政大学STARTプログラム「未来のライフスタイル共創プロジェクト in 横浜」フィールドワークに企画協力しました【イベントレポート】
- On 2024年11月11日
法政大学では2022年度から、SDGsを学ぶプログラムとして「STARTプログラム(SDGs Target Active learning Revolutionary Trial Program)」を産学連携で実施しています。Circular Yokohamaでは、「STARTプログラム 未来のライフスタイル共創プロジェクト in 横浜」にて2024年9月8日に行われたフィールドワークの企画運営に携わり、横浜市内で活動する二つの団体を訪問しました。
本記事では、当日の視察内容をレポートします。
「未来のライフスタイル共創プロジェクト in 横浜」フィールドワーク概要
STARTプログラムでは、問いをデザインする力、固有の学問領域にとらわれない思考、社会のために行動する実践力を養うことを目指し、SDGsに先進的に取り組んでいる企業による講義や、グループワーク、グループ発表、現地フィールドワークなどを実施しています。
今回のプログラムには、法政大学の学生のほか、都内の私立大学、私立高校の学生も加わり、総勢18名が参加しました。
フィールドワークの実施にあたり、理想とする未来のライフスタイルや、サーキュラーエコノミーplusに基づく横浜のまちづくりに関する事前講義が開催されました。
Circular Yokohamaが企画協力したフィールドワークでは、事前講義で学んだ「ライフスタイル」や「まちづくり」の実現に向けて、横浜市内で活動を推進するふたつの団体を訪問。学生1人ひとりが思い描く理想の未来像を具体化する機会の創出を目指しました。
・フィールドワーク実施日程:2024年9月8日(日)
・視察先:金沢漁港(幸海ヒーローズ)、竹山団地(特定非営利活動法人KUSC)
・主催:法政大学
・講師:日本旅行
・協力:横浜市、Circular Yokohama(ハーチ株式会社)
コンブの「環境再生型養殖」に取り組む幸海ヒーローズ
初めに訪れたのは、金沢区でコンブ養殖に取り組む「幸海ヒーローズ」の活動現場です。
地球温暖化で海水温度が上昇していることが知られて久しく、コンブをはじめとする海藻養殖を通じた二酸化炭素の吸収や固定に注目が集まっています。
幸海ヒーローズでは、コンブ養殖を通じて環境面だけでなく社会面での貢献にも力を入れています。
富本さん「水産業界では全国的に人手不足や後継ぎ問題が深刻化しています。コンブの養殖は、漁師業において女性でも関わりやすく、また魚の漁獲量が減る冬のシーズンを使って養殖ができます。ヒトや経済にとっても嬉しいのが、コンブ養殖なのです」
環境・経済・社会のすべてに優しい、まさに「サーキュラーエコノミー型」の事業活動です。
富本さん「『環境活動』と聞くと、つい消費を節約する『我慢』行動の重要性を考えがちですが、幸海ヒーローズではむしろコンブの『消費』を促していくことで環境が再生されていく仕組みを目指しています」
そのために、コンブを育てた先にあるコンブの消費と利活用においても様々な挑戦を行っています。
富本さん「国内のコンブ養殖の大部分は、北海道をはじめとする東北の寒い地方が占めています。それに比べ、横浜の海は海水の温度が高く、食用にするには北のコンブの味には勝てません。しかし、水温が高い分成長が早く、二酸化炭素の吸収スピードが早いという利点があります。収穫したコンブの利活用を考えるうえでは、横浜産コンブだからできるユニークな使い道を考えています」
その事例の一つが、「コンブジェラート」だそうです。
収穫したコンブは、はじめに銭湯組合のもとに届き、「コンブ湯」として楽しみます。銭湯に使ったあとのコンブは、次に市内の障がい者施設にて乾燥、加工、肥料化します。そして、出来上がった肥料を畑に蒔いて、お茶を育てています。最近、そのお茶を使ったジェラートが完成し、2024年8月より販売をスタートしたそうです。
資源循環と環境負荷の低減を考えるとき、バリューチェーンやライフサイクルという言葉でも示される通り、使い終わったモノがどこへ行って、どんな風に活用されていくのか、その道筋を可視化することが大切です。しかし、多くの人々が関わるなかでその追跡と把握を行うことは簡単ではありません。コンブがコンブの姿ではなくなった先でもなお、その資源の行く末を追いかけている幸海ヒーローズの活動には驚きです。
富本さん「前例のない活動を推進していると、様々な壁にぶつかり、たくさんの失敗を経験します。それでも、私は『知覚動考(ともかくうごこう)』という考えを大切に、コンブで未来を救うことを目指して活動を続けます」
誰もが知っている身近なコンブですが、「未来のライフスタイル」の変容に向けた可能性を秘めていることを知った参加学生の皆さん。後半には、4メートルを超える巨大な生コンブを触ったり、横浜産コンブをしゃぶしゃぶにして味わったりと、コンブや金沢区産品の楽しみ方を五感を使って味わう時間となりました。
スポーツ×団地コミュニティで地域を活性化する、神奈川大学サッカー部
フィールドワークの後半は、緑区にある竹山団地の訪問です。
特定非営利活動法人KUSC(以下、KUSC)は、神奈川大学サッカー部を支援する団体。同サッカーチームの監督・コーチが中心となって地域の様々な団体と連携し、部員たちの社会参加の機会を創出しながらまちづくりの推進に積極的に関わっています。
今回は、2025年にオープン予定の新施設を特別に見学させていただき、サッカー部の学生と竹山団地のコミュニティがどのような協働と地域づくりを進めているのか、詳しくお話を伺いました。
新施設は、団地の敷地にある商店街の一部や銀行の跡地。サッカー部員の皆さんが日ごろのトレーニングに活用できるような本格的な機材が導入されており、今後は団地住民の皆さまにも開放していくということです。特に日常的な運動に課題を抱えている高齢世帯の方々にとっては、健康の維持管理において重要な施設となるかもしれません。
後半は、ツアー参加学生と神奈川大学サッカー部の学生が交流を行いました。
異なる背景や動機から社会や地域の課題に関心を寄せている学生たちですが、「ボランティアや社会貢献活動の重要性は理解しているけれど、なかなかモチベーションが上がらない。みんなはどのように向き合っているか、教えてほしい」、「サッカー部の活動の一部として、団地に暮らしながら自治的な活動にも力を入れている。サッカー以外の活動を大変だと思うことはないか」など、ざっくばらんな意見交換を行っていました。
サッカー部の学生たちは、次のような話を共有しました。
「入部当初は、サッカー部員という立場で団地に暮らしながらコミュニティ活動を行う目的があまり分かっていませんでした。しかし、近所の高齢者や近隣の農家の方から様々な話を聞くうちに、そういえば自分も小さい頃は畑仕事を手伝って楽しかったな、とか自分の祖父母も大切にしたいな、などと考えるようになりました。そして、これは自分にとって意味のある活動だと、その必要性を理解できるようになりました」
「『めんどくさい』と思いながら作業することもできます。しかし、雑草を抜く作業を丁寧にするのか適当にするのかは、サッカーの技術や質にも直結すると思います。雑草を抜いて畑を耕す人がいるから、そのおかげで栄養のある食事を食べることができて、サッカーの技術にも磨きをかけることができる。それを理解できたから、ほかの人ではなく自分がやろうと思えるようになりました」
日ごろの授業への出席はもちろん、毎朝のサッカーの練習に加えて団地でのスマホ教室や子ども食堂の開催など、言葉通り多岐にわたる活動に力を入れているサッカー部員たち。その言葉から、ツアーへ参加した学生たちは多くの刺激を得たようです。
成果発表会:「未来のライフスタイル」を考える
ツアーから約2週間後となる9月27日、法政大学市ヶ谷キャンパスにて成果発表会が行われました。学生たちは、講義やツアーで見聞きした情報を元に、プログラムのテーマである「未来のライフスタイル」について、その理想や自分にできることを考えて発表を行いました。
交通手段やインフラに関わる課題の解決を目指すライフスタイルを考えた人や、横浜のまちを舞台にその歴史や特徴から未来のライフスタイルを提案した人、空き家や空きスペースの活用をビジネスチャンスと捉えて経済活動の面からライフスタイルを見直した人など、一人ひとりが異なる視点から「未来のライフスタイル」を考察していました。
Circular Yokohamaにとっても、循環型の暮らしは突然実現するものではなく、今ある暮らしの延長線上に少しずつ実現していくものであるということを再認識する貴重な機会となりました。そして、資源や環境を軸とするサーキュラーエコノミーはもちろんのこと、ウェルビーイングやサステナビリティなどの社会面における豊かな暮らしの実現の重要性にも気づくことができました。
Circular Yokohamaでは今後も、大学をはじめとする多様な機関との連携・共創を深めながら、循環型のまちづくりを推進してまいります。
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【参照記事】未来のライフスタイル共創プロジェクトin横浜 を実施しました|法政大学
【参照記事】「共創ケーススタディ」公開収録|よこはま共創コンソーシアム
室井梨那(Rina Muroi)
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