横浜市鶴見区に本拠を置く海月(くらげ)研究所は、未利用のクラゲを有効活用することで生物多様性と海洋環境保全、ライフサイエンスへの貢献を目指している理化学研究所発のバイオソーシャルベンチャーです。
現在、気候変動などを要因とする海水温の上昇によるクラゲの大量発生が社会課題となっています。大量発生したクラゲがプランクトンを捕食して海洋の生態系に悪影響を及ぼしたり、クラゲで漁業用の網が破損されたり、発電所に流入し発電が停止されたりするなど、世界中で多大な被害が報告されています。これまでにも日本国内の発電所に流入した年間数万トン~数十万トンにもおよぶクラゲは活用されることなくそのまま廃棄されていましたが、それにも多大な費用が必要となります。
海月研究所では、この未利用のクラゲを使用した高機能素材の製造に取り組んでいます。調達先は日本沿岸に限定しており必要以上のクラゲを乱獲することはありません。バイオマス利用の5F原則に従い、食品(Food)・繊維(Fiber)・飼料(Feed)・肥料(Fertilizer)・ 燃料(Fuel)と、バイオマスを付加価値の高い順に多段階に利用することで事業成立の可能性を高めています。
具体的には食品素材や化粧品原料としての活用を進めるともに、最も付加価値の高い医療分野への応用も目指しています。また、クラゲは水分・塩分・タンパク質が主成分のため、燃料としての活用は困難ですが、それ以外の飼料や肥料、繊維など汎用的な用途開発ができ、多くの社会課題の解決につながる可能性を秘めています。