テイクアウト容器のゴミ問題解決を目指す、DXアイデアソン【体験レポート】
- On 2021年6月1日
2021年3月13日、オンラインにて「サーキュラーエコノミーとデジタル・トランスフォーメーション(DX)」をテーマにした、テイクアウト容器のゴミ問題解決を目指すDXアイデアソンを開催しました。
当日はCircular Yokohama編集部がコーディネーターをつとめ、15名の方にご参加いただきました。本記事ではその様子をお届けします。
※本イベントは、Circular Yokohamaが、一般社団法人YOKOHAMAリビングラボサポートオフィス、NPO法人横浜コミュニティデザイン・ラボと共同で企画運営するCircular Economy Plus School(サーキュラーエコノミープラススクール)のプログラムです。
DXとサーキュラーエコノミーの関係性
まずはじめに、アイデアソンを行う前のインプットとして「デジタル・トランスフォーメーション(DX)とは」「サーキュラーエコノミーとは」について、Circular Yokohamaの瀧田が解説しました。
DXとは、「人々の生活をより良い方向に変化させるデジタルによる変革のこと。」(IDEAS FOR GOOD「デジタルトランスフォーメーション(DX)とは・意味」より引用)
3Dプリンター、IoT、AI、ブロックチェーンなどDXに用いられる代表的な技術を紹介した後、3Dプリンターを使い歩行データからまちづくりへ応用する取り組みや、AIとブロックチェーンを使った廃棄物のマッチングなど、複数の事例をもとにDXがサーキュラーエコノミーの実現においてどう役立つのか学びました。
「テイクアウト容器のシェアリングサービス」を考える
イベントの後半は、 4チームに分かれてのアイデアソン行いました。今回の課題は、みなとみらいを舞台に「テイクアウト容器のゴミ問題」解決を目指すサービス。
前半で紹介したDXの技術や先進事例をヒントにしながら考えていきます。
チームの全員が自由に発言し考えを整理していけるよう、アイデアソンではオンラインホワイトボードツール「miro」を使用。図やテキストを用いながら、各チームがオンライン上でアイデアを練りました。
まずは現状の使い捨て容器を使ったテイクアウトの仕組みをもとに、ユーザー・店舗それぞれの視点から使い捨て容器利用の利点・欠点の分析を行います。
ユーザーの視点から見ると「新しい容器なので衛生的」「好きな場所で食べられる」といったメリットがある反面、「ゴミが増える」「質の高い料理でも高級感が感じられない」といったデメリットがあることがわかりました。また、店舗から見たメリットには「低コストでテイクアウトの提供が可能」「作り置きができる」といった意見があげられたほか、「自粛中でも営業・販売ができる」など、新型コロナウイルスの影響を踏まえた飲食店の状況を反映した意見も出ました。また、コロナ禍を前提とした課題には、「売れ残ると廃棄が出る」「お客さんとコミュニケーションが取れない」といった意見がありました。
続いて、これらの利点と欠点を踏まえて、リターナブル容器のシェアリングサービスのビジネスモデルと、それを実現するデジタル・テクノロジーを考えていきます。
アイデアは、「どのようなシェアリング容器にするか」「誰がどこで回収・洗浄するか」「ユーザーのメリット」「店舗のメリット」「誰からどのようにお金をもらうか」の5項目に分けます。参加者からは、「容器をIoT化してはどうか」「返却するごとにポイントがつくと良さそう」「従業員の健康促進に紐づけては?」などの意見があがりました。
そしてアイデアを出し尽くしたら、次は図を使ってユーザー・サービス提供者・飲食店のコミュニケーションの仕方や仕組みを考えていきます。ここでは、みなとみらいの飲食店をどのような人が利用するか、みなと未来にはどのような商業施設や企業があるか、といった「地域にある既存資産」についても話し合いました。
最後は各チームの代表者によるアイデアの共有です。チーム内で複数のビジネスモデルが考案されるなど活発なディスカッションの様子を伺うことができました。
「みなとみらいにある企業の食堂を基点にユーザーを増やし、IoT容器を使って量や内容をパーソナライズしてはどうでしょうか。」
「店舗からのサービス利用料や仲介料のほか、社員の健康を管理するデジタルサービスを提供してお金をもらうビジネスモデルを考えました。」
「容器がゴミになる、美味しそうに見えないという課題に着目しました。3Dプリンターを使って用途に合わせた容器をつくり、顧客体験を向上させることができます。容器の種類やデザインによってサービス料金に差をつけることもできると思います。」
今回題材にした「リターナブル容器のシェアリングサービス in みなとみらい」というテーマは、Circular Economy Plus Schoolにご参加いただいた方が今後みなとみらいにて実現しようとしているプロジェクトです。
イベントの最後に、実際のプロジェクトで考案されているビジネスモデルを共有するとともに、国内・海外で行われている容器のシェアリングサービスの事例を紹介し、アイデアソンは終了しました。
環境・社会・ビジネスのDXはまさに現在進行形で進んでおり、デジタルテクノロジーを活用してどのようにサーキュラーエコノミーへの移行を加速させることができるのか、探っていくべき点が多くあります。Circular Yokohamaでは今後も、プロジェクトへの参加や情報発信を通じて、地域課題の解決に貢献して参ります。
編集後記
2018年に経済産業省が「デジタルトランスフォーメーション(DX)を推進するためのガイドライン」を取りまとめたことを契機に広がり始めた、DX推進の取り組み。ただ単にIT化するだけではなく「ビジネスモデルの変革」「新しい価値の創出」を目指す点において、サーキュラーエコノミーと共通する部分も多いように思います。
例えばデータの活用など、これまでは価値が深く追求されていなかった要素から新たな価値を生み出すという点です。デジタル活用によってシェアリングサービス等の新たなビジネスモデルを展開できる点は、サーキュラーエコノミーの実現に向けての大きな可能性ではないでしょうか。
そして何より、今回のシェアリング容器のプロジェクトのように、Circular Economy Plus Schoolにご参加いただいた方から共創プロジェクトが生まれることが私たちの喜びです。
「2025年の崖」を前に、多くの企業がDXを推進する昨今。DXで「いいな」と思う事例を見つけた際には、自分の身のまわりのビジネスモデルにどう取り入れることができるかを考えてみてはいかがでしょうか。
※今回題材とした「リターナブル容器のシェアリングサービス in みなとみらい」のプロジェクトにご興味のある方は、Circular Yokohamaまでお問い合わせください。
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Circular Yokohama Editorial Team
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