Circular Economy Plus School Vol.7 プラスチックのサーキュラーエコノミー~プラは悪者?循環型社会におけるプラスチックとの付き合い方~【イベントレポート】
- On 2021年4月14日
2020年1月〜3月にわたって開講された全12回のサーキュラーエコノミー学習プログラム「Circular Economy Plus School」。
本記事では、2月18日に行われた第7回「プラスチックのサーキュラーエコノミー」座学セッションの模様をご紹介します。
「Circular Economy Plus School」とは
Circular Economy Plus School(サーキュラーエコノミープラススクール)は、横浜市が掲げるビジョン「サーキュラーエコノミーplus」の実現に向けた、地域発のサーキュラーエコノミー(循環経済)学習プログラムです。環境にも人にも優しく、持続可能な循環型のまちづくりに関わりたい人々が産官学民の立場を超えて集い、学び、つながることで、地域の課題を解決し、横浜の未来をつくりだしていきます。
学習プログラムの詳細および参加申し込みは、Circular Economy Plus School 公式ページより。
登壇者紹介
▽栗原清剛(くりはら・きよたか):横浜市資源リサイクル事業協同組合副理事長
横浜市資源リサイクル事業協同組合副理事長。昭和47年8月16日横浜市生まれ。環境に配慮をする行動に誰もが気軽に参加できる街、「リサイクルデザインタウン」実現に向け、未来のリサイクル業界を担う組合員とともに日々、奮闘中。毎年、夏休み恒例の「環境絵日記」や、リサイクル・環境問題に関する出前講座を実施し、子どもたちへの環境教育事業に強い意欲を持って活動している。
▽林光邦(はやし・てるくに):株式会社テクノラボ代表
株式会社テクノラボ 代表取締役社長。テクノラボは主にIoT機器、医療機器といった製品の少量開発を行うプラスチックメーカー。その一方プラスチック製造に携わる企業として海洋ゴミ問題に対しなにかできることはないかと社内研究チームを立ち上げ、現在海洋ゴミのアップサイクルブランドbuoyの製造技術を担う。
▽北井俊樹(きたい・としき):株式会社グーン ブルーエコノミー研究所
横浜市立大学で生物学を専攻し内分泌学を学んだ後、2019年に同社入社。廃棄物分野において横浜市と共に展開しているいくつかの海外展開プロジェクトの参加し、タイ、フィリピンにて調査を行う。国内においても特別管理廃棄物であるポリ塩化ビフェニル(PCB)の調査等を行う。
第1部:ゲストトーク
リサイクルの現場から描く横浜の資源循環
横浜市資源リサイクル事業協同組合で副理事長を務める栗原清剛さんから、「プラスチックと私たち〜リサイクルを止めるな〜」をテーマに、プラスチックとそのリサイクルに関する喫緊の課題を共有していただきました。
横浜市資源リサイクル事業協同組合は、横浜市内でリサイクル事業を展開する企業約100社からなる民間団体です。「リサイクルデザインタウン(地域循環型社会)」の構築を目指し、行政支援や市民支援を通じてリサイクルに関わる様々な活動に従事しています。資源リサイクル事業協同組合の詳しい活動については、資源循環を通じて地域のつながりをデザインする「横浜市資源リサイクル事業協同組合」の取材記事にてご紹介しています。
栗原さん「2019年8月、横浜に程近い鎌倉市、由比ヶ浜に漂着した小クジラの胃の中からビニール片が発見されたというニュースは衝撃的でした。2050年には海洋プラスチックゴミの量が現在の4倍にまで増え、海に生息する魚の数よりも多くなると予測されています。リサイクル事業に従事する我々は、これらのニュースを決して見過ごすことはできません。」
最近では見聞きしない日はないほど議論されているプラスチック問題。そもそもなぜ、そしていつ頃から大きく取り沙汰されるようになったのでしょうか?
栗原さん「2016年頃、世界全体の廃プラスチック(以下、廃プラ)は、その超半数にあたる56%が中国へ輸出されており、日本も中国への輸出に頼っている国の一つでした。しかし、2018年に中国で廃プラの輸入規制が法制化されたことをきっかけに、輸出に頼らずに、国内で資源の循環に取り組んでいくことが必須になると環境省が通達を行いました。それから、プラスチックのリサイクルや脱プラスチックといった議論が日常的になされるようになりました。」
プラスチックを取り巻く問題がより広く知られるようになると、市民から「廃プラってすでにリサイクルされてるんじゃないの?」「何が問題なの?」といった疑問をよく投げかけられるようになったという栗原さん。
栗原さん「横浜市の資源回収で定められている週に一度の『プラごみの日』の回収対象は、製品が入っていた容器や包装です。つまり、プラスチック製であっても、製品そのものはプラごみではなく燃やすごみなのです。」
なぜ、同じプラスチック製なのに包装はプラごみで中身は燃やすゴミなのでしょうか?
栗原さん「プラスチック製の容器・包装のリサイクルにかかる費用は、製品の販売をしている事業者が負担すると法律で決まっている一方、製品自体のリサイクル費用の負担者は決まっていません。プラスチックのリサイクルにかかる費用は高額ですから、負担者の定められていないプラスチック製品もリサイクルに回そうとすれば、そこに多額の税金が必要となります。しかしそれは現実的ではないという事情があり、プラスチック製品本体はリサイクルの資源として回収されていないのが現状なのです。」
プラスチックの使用による環境負荷を減らすため、最近では微生物によって生分解される生分解性のプラスチックやバイオマスを原料に製造されるバイオマスプラスチックなど、従来のプラスチックに変わる新素材の導入も進んでいます。しかし、それらの代替素材にも課題が残されているといいます。
栗原さん「生分解性プラスチックならば土に還るから安心と思いがちですが、分解可能なものでも、土の環境を整え適切な方法を取らなければ分解されません。また、バイオマスプラスチックのなかには生分解しないものもありますし、石油由来成分から作られているものもありますので、必ずしも環境にとってより良い素材とは限らないのです。」
平成30年に環境省が策定した「第四次循環型社会形成推進基本計画」にはプラスチック資源循環戦略が盛り込まれ、いよいよ国をあげて本格的にプラスチックの資源循環へ取り組んでいく流れが生まれています。今後もプラスチックを取り巻く課題については、様々な議論や取り組みがなされていくのではないでしょうか。
栗原さん「現状のプラスチック問題を乗り越えていくための資源循環システムの構築に向けて、国内では、テクノロジーが追いつかなかったりプラスチックの資源としての価値が低かったりと、課題も多く残されています。しかし、だからといってプラスチックの利用を止めるのではなく、正しくリサイクルしていけば良いのではないでしょうか。欧州で一足先に進んでいるサーキュラーエコノミー化ですが、我々も日本国内での循環の構築に本格的に舵を切り、日本版のサーキュラーエコノミーを推進していこうという市民の高い意識が求められていると感じています。」
海洋プラスチックから生まれた工芸品”buoy”
次に株式会社テクノラボで海洋ゴミのアップサイクルブランドbuoy(以下、ブイ)の製造・販売に取り組んでいる林光邦さんに廃プラスチックが増加する要因を含め、現在の活動内容やそれに取り組む想いについてお話いただきました。
林さん「2008年に創業したテクノラボは、IT機器を中心にプラスチック製品の受託販売を行う会社としてスタートしました。『新しいカタチを生み出して、社会にもっと付加価値を創り出す』をミッションに掲げています。」
活動開始当初からプラスチックへの熱い愛を持って活動してきた林さんですが、あるとき愛知県対馬の海岸で大量のプラスチックの漂着ごみを目撃し、衝撃をうけたといいます。
林さん「中国や東南アジアといったアジア圏から大量のプラスチックゴミが海へ流出しているというデータがあるのですが、海の対流との兼ね合いで、多くの海洋ゴミは日本の沿岸に漂着しています。横浜に暮らしていると海洋ゴミの漂流について実感を持ちづらいかもしれませんが、日本はまさに海洋ゴミのホットスポットなのです。実際、日本海沿いをはじめとするいくつかの地域では、生活に支障をきたすレベルの海洋プラが漂着しているのが現状です。プラスチック産業に関わる者として『これが我々が作るプラスチック製品が生み出している付加価値なのか』と思い知らされ、ショックを受けました。」
そこから、なぜプラスチックがゴミになってしまうのか、その理由を問い直したそうです。
林さん「私が気がついたことは、安くて大量生産が可能なプラスチック製品に愛着や思い入れを持っている人は決して多くなく、そのせいでプラスチックは簡単にゴミとして捨てられてしまうということです。」
さらに、廃プラが増加する原因として、リサイクルの技術にも課題が残されていると話す林さん。
林さん「プラスチックの中には、リサイクルができず燃やすしかないものもあり、海洋ゴミのうちリサイクル可能なPETに分類されるものは、半分以下しかありません。それ以外の大部分の海洋ゴミは焼却処分されているのが現状です。加えて、海洋ゴミは異素材が混ざり合っている状態のため分別やリサイクルが極めて難しく、新しい製品として整形するための工夫やアイデアが不可欠です。」
その上、海洋ゴミを製品として生まれ変わらせるためには、一定以上の量を収集する必要があり、生産効率の高い技術が求められているという点も難しさの一つなのだといいます。
林さん「そして、我々が何よりも課題だと感じていることは、リサイクル製品が再び廃棄物となって捨てられてしまうことです。いくら海洋ゴミを再生しても、それがまた捨てられてしまうのならば意味がありません。」
そこで、テクノラボでは「捨てられたプラスチックから作る捨てられないプロダクト」作りをモットーにしているそう。
林さん「従来のプラスチック製品の持つ安くて大量生産でいつでも手に入る手軽さを追求するのではなく、顔が見える関係の中で生まれ、そして使われるプロダクトであれば簡単に捨てられることはないと考えたのです。廃棄物だからこそ出せる独特の色合いやデザイン、そしてその製品が持つストーリーや海洋ゴミの問題をきちんと伝えることを大切にしています。」
海洋ゴミを排出をしている河川は現在世界に10あります。それらの河川の河口に、ブイの工房の集積を構築することが今後の目標だと話す林さん。
林さん「地域によって漂着するゴミの色や材質が異なるため、地域ごとに特色ある製品を作ることができたら良いと思っています。また、海洋ゴミのリサイクル技術構築にも目を向け、より大きく実用的な製品作りにまで活動を広げていきたいです。いつか我々がブイの活動をする必要がないくらい環境が再生されるまでは、この事業を続けよう。そんな心構えで、今後も取り組みを続けていきます。」
横浜の廃棄物とプラスチックの資源循環
続いて、木材とプラスチック等の廃棄物を回収し資源としてリサイクルする事業を行う株式会社グーン(以下、グーン)。同社のブルーエコノミー研究所で 主任を務める北井俊樹さんから、その事業内容やSDGs・CSR活動についてご紹介いただきました。
グーンは、横浜市金沢区の本社と中区のみなとオフィスを国内の拠点に、フィリピンにも支店を設け、グローバルに産業廃棄物の循環事業を展開しています。
北井さん「グーンはもともと、廃木材や木くずをリサイクルする企業として立ち上がりました。その後、木くずのみならず廃プラスチックの引き取りも開始し、それらを燃料へリサイクルする事業を軸に据えるようになりました。」
では、グーンのもとに運び込まれる、不要となった木やプラスチック由来の産業廃棄物は、どのような工程を経て燃料へとリサイクルされるのでしょうか。
北井さん「木材のリサイクルでは、建築現場から出る廃木材やパレットを引き受けています。まず、それらを粉砕し木のチップにしてから、ボイラー燃料やパーティクルボードの原料として出荷しています。」
最近では、横須賀に出来たバイオマス発電所へ木のチップを燃料として出荷し、木質バイオマス由来の電気を地域内で循環させる事業にも取り組んでいるそうです。
北井さん「地域で使用する電力を作れば、その分のCO2が地域に排出されます。すると今度は、そのCO2を吸収して地域にある木々が育ちます。そしてその後、生育し、伐採され不要となった木々をバイオマス発電の燃料に生まれ変わらせる、という循環型の仕組みが木質バイオマス発電の取り組みです。」
一方、今回のトークテーマであるプラスチックのリサイクルでは、林さんのトークで課題提起されていた、分別ができず焼却されてしまう廃棄物の循環・利用に取り組んでいます。
北井さん「グーンではまずはじめに、搬入された様々な材質のプラスチックが混ざり合った廃プラを破砕します。その後、それを選別し、燃やせない材質のものだけを取り除きます。そして『フラフ燃料』と呼ばれるプラスチックを5センチメートル角に砕いたものを集めて、1メートル四方のキューブ状に梱包し、運搬しています。グーンが取り組んでいるサーマルリサイクル*事業の特徴は、廃棄物を全てまとめて焼却するのではなく、プラスチックのみを選別することで、より利用価値の高い燃料を作り出している点です。またフラフ燃料の運搬においては、モーダルシフト**を取り入れており、トラックでの運搬と船舶での運搬を併用しています。」
*サーマルリサイクル:廃棄物を焼却する時に得られる熱エネルギーを取り出して、発電などに活用するリサイクルの仕組み。
**モーダルシフト:貨物輸送において、トラックによる陸上運搬を、より環境負荷の小さい海上輸送あるいは鉄道に転換すること。
トークの後半には、グーンが取り組む海外事業についてもご紹介いただきました。
北井さん「我々の海外事業展開の発端は、2012年に横浜市の『Y-PORT事業』のビジネスマッチングを活用し、フィリピンの廃棄物処理の状況について調査を行ったことでした。調査を行うと、埋め立て処分とは名ばかりに、埋め立てる施設の要領を超えた大量の廃棄物が山となって存在していることがわかりました。特に廃プラスチックは有機物とは異なり、時間が経っても自然分解されません。そのため、長い間積み上げられたプラスチックが環境汚染の原因となったり、発火して火災の原因になったりしているのです。」
そのような状況を解決すべく、グーンでは2017年にフィリピン、セブにフラフ燃料の製造工場を建設し、従業員に現地フィリピンの方々を雇用しました。
北井さん「2021年に入ってからは、現地のNGO団体との協働で、海洋プラスチックからフラフ燃料を製造することにも成功しました。」
そして、これからの取り組みとして、コロナ禍で急増したマスクなどの廃棄物のリサイクル事業への取り組みも動き始めているそうです。
北井さん「コロナ禍の新たな課題として、大量の使い捨てマスクやフェイスシールドの廃棄問題があります。グーンでは、環境省からの委託を受け、使い捨てマスク等のサーマルリサイクルについて調査を行っています。マスク等を滅菌する仕組みを導入し無菌化することで、使い捨てマスク等の燃料化を実現できるのではないかと考えています。引き続き調査を行い、実現に向けて動いていきたいです。」
第2部パネルディスカッション:プラは悪者?循環型社会におけるプラスチックとの付き合い方
第2部では、第1部の内容を踏まえて循環型社会におけるプラスチックとの付き合い方について、講師の皆さんとパネルディスカッションを行いました。モデレーターは、横浜市政策局共創推進課の関口昌幸さんとCircular Yokohama編集部の加藤佑が務めています。
加藤「脱プラスチックの動きが加速するなかで、従来のプラスチックに変わる様々な新素材の導入が開発・検討されています。しかしながら、廃棄物回収の観点から考えてみると、ゴミの分別が一層複雑化してしまうのではないかと感じています。栗原さんの現場では、どのようなことを感じていらっしゃいますか。」
栗原さん「これまでにも、例えば紙製の本体にプラスチックのキャップがついたタイプの牛乳パックなど分別の方法についての問い合わせがよくあり、家庭でもゴミの分別に苦慮している方々がいるのだと感じる場面が多くありました。最近登場した新素材でも、今後も同じように『分別方法がわからない』場合が出てくると思います。製品を作る方々は使用上の便利さを追求して設計しているはずですが、その廃棄方法が消費者まで伝わっていないという現状があります。まず今の私たちにできることは、廃棄物の回収の際にドライバーを中心に分別や回収の方法について声をかけて回ることだと考えています。」
関口さん「製品の設計にも工夫が必要ですが、資源循環を前提としたデザイン性の高いモノはどのように作ることができるでしょうか。林さんが活動のなかで意識している点を教えてください。」
林さん「同じ『かっこいい』や『洗練された』といった言葉でも、年代が違えばイメージも大きく異なると感じています。ですから、『かっこよさ』を追求するのではなく、みんなが今何を求めているのかという視点に立って、人々に長く愛用してもらえるようなデザインを考えるようにしています。ブイでは、主に30年代前後の女性をターゲットに製品作りをしているのですが、同じ性別や年代でも多様な文化や暮らしを持っている方々がいらっしゃるということを日々実感しています。」
加藤「今の若い世代は、かっこよく見せるとか可愛く見せるというよりも、ありのままを見せたいという意識が強くなってきているのではないかと個人的に感じています。林さんのおっしゃる通り『かっこいい』のような形容詞での定義付けは人によって異なるので、そういったラベル付けはあえて製品を使う人に委ねる、という林さんのスタンスはとても素敵だと思います。」
関口さん「北井さんには、グローバルな観点からお話をお伺いします。グーンがフィリピンで展開しようとしている、コロナ禍で増加するマスクなどの廃プラスチックから燃料を作る取り組みは、ぜひ横浜でも展開できると良いと思っています。その仕組みを日本に逆輸入しようとするとき、考えうる課題として何があるでしょうか。」
北井さん「日本には廃棄物処理に関する厳格な法律があります。例えば、廃棄物を引き取ってリサイクルする事業を新たに始めようとする場合、取り扱う廃棄物の種類や処理方法によって許可を取得する必要があります。この許可があることで、リサイクル業者は廃棄物処理を担う対価を受け取って廃棄物を回収しますが、許可の要件は厳しいため手軽に取得することはできません。
また同じリサイクル業者であっても、廃棄物処理業の許可を持たない業者もいます。この場合には、業者が廃棄物処理に係る代金を受け取ることはありません。むしろ、業者はお金を払い、廃棄物を製品製造の原料として買い取るのです。すると、仮にプラスチック製品の市場価値が下がり、買い取っていた原料の価値がゼロになってしまった時、これまで買い取っていた原料は、資源ではなく廃棄物として取り扱われるようになってしまいます。もしも、このようにして廃棄物が資源としての経済的価値を持たなくなった時、廃棄物処理業の許可を持たない業者はリサイクル事業の運営を継続できなくなってしまう可能性があるのです。
それを防ぐために、日本では既存の法律の厳格さはそのままに、もう少しフレキシブルに対応できるようさらに法制度を整える必要があると感じます。しかし、リサイクル事業をより自由にしていくと、廃棄物処理業界全体が無法地帯化してしまい適正処理が保たれない可能性もあります。自由であることが良いと一概に言えないのが難しいところです。」
加藤さん「最後に、本日のテーマである『プラスチックとどう向き合っていくのか』という問いについて、ゲスト講師の皆さまのお考えをお聞かせいただきたいと思います。」
栗原さん「プラスチックは決して悪者ではないと思っています。ビンやペットボトルといった様々な素材の容器が、その時代に合わせて登場するのは然るべきことですが、私たち人間の手で生み出したものですから、どのように社会で役立たせるのかを考えることは我々一人ひとりの責任ではないでしょうか。分別やリサイクルの方法を考え続けることで良い文化が生まれていくと思いますので、これからも市民の皆様に向けて、プラスチックをはじめとする廃棄物の資源循環にはどのような方法があるのか、正しく伝え続けていきたいと考えています。」
林さん「私がこれまでプラスチックを活用する事業者として活動してきて一番残念だと思うことは、プラスチックという素材がみんなから愛着を持たれない存在となってしまったことです。『プラスチックは安くて、どこにでも大量にあって、いつでも手に入る』といったイメージが固定概念としてついてしまったのだと思います。プラスチック業者も機能ばかりを追求して、モノを大切にするという気持ちを忘れてしまっていたのかもしれません。子どもを育てるのと同じように、自分が愛を持って育てられるプラスチック製品を購入、迎え入れていただけるよう、ものづくりの面からアプローチしていきたいです。」
北井さん「廃棄物のリサイクルがどのように行われているのか、より多くの方々に興味を持っていただきたいという思いです。最近では、テレビ番組でもリサイクルの現場を特集する機会が増えてきました。自分の出した廃棄物がどうリサイクルされるのかを理解することで、分別の仕方を考えることにつながるはずです。もしもプラスチック製品愛着が持てなかったとしても、自分が一度迎え入れた製品ですから、廃棄が必要なときにはどう処分すべきなのか、きちんと考えていただければと思います。」
編集後記
本記事でご紹介したイベントの完全版は、アーカイブ動画としてもご覧いただけます。ご興味のある方は、ぜひチケットをお求めの上ご視聴ください。
そして、次回のテーマは「ファッションとサーキュラーエコノミー」です。
ファッション分野でサーキュラーエコノミーに取り組んでいる方々をゲストにお呼びし、現在のファッション業界の問題点や、持続可能な原材料の調達、循環型のデザインについて学んでいきます。生活に身近なファッションを通じてどのように循環型社会に貢献していくことができるのかを皆さんと一緒に模索していきます。
次のイベントレポートもお楽しみに!
【第1回イベントレポート】Circular Economy Plus School Vol.1「横浜とサーキュラーエコノミー」~海外先進事例とともに考える、循環する都市・横浜の未来~
【第2回イベントレポート】Circular Economy Plus School Vol.2「食のサーキュラーエコノミー」~都市で食の地産地消・循環型農業をどう実現する?~
【第3回イベントレポート】Circular Economy Plus School Vol.3「再エネとサーキュラーエコノミー ~エネルギーの地産地消から始まる循環型のまちづくり~」
【第4回イベントレポート】Circular Economy Plus School Vol.4「サーキュラーエコノミーとまちづくり ~地域に循環をもたらすコミュニティと空間をどうデザインする?~ 」
【第5回イベントレポート】Circular Economy Plus School Vol.5 「ウェルビーイングとサーキュラーエコノミー ~ヘルスケアの視点から考える、地域を幸せにする循環経済とは~」
【第6回イベントレポート】Circular Economy Plus School Vol.6 「サーキュラーエコノミー時代の新しい働き方~循環を支えるインクルーシブな雇用とパラレルキャリア~」
【第7回イベントレポート】Circular Economy Plus School Vol.7 「プラスチックのサーキュラーエコノミー~プラは悪者?循環型社会におけるプラスチックとの付き合い方~」
【第8回イベントレポート】Circular Economy Plus School Vol.8 「ファッションとサーキュラエコノミー~横浜で循環型のファッションをどう実現する?~」
【第9回イベントレポート】Circular Economy Plus School Vol.9 「サーキュラーエコノミーとスタートアップ~横浜発の循環型イノベーションをどう起こす?~」
【第10回イベントレポート】Circular Economy Plus School Vol.10 「サーキュラーエコノミーとデジタル・トランスフォーメーション~循環を加速させるテクノロジーの未来~」
【第11回イベントレポート】Circular Economy Plus School Vol.11 「ドーナツ経済学で考えるサーキュラーエコノミーplusの価値~アムステルダムのドーナツ都市戦略に学ぶ〜」
【第12回イベントレポート】Circular Economy Plus School Vol.12 「公民連携による横浜発のサーキュラーイノベーション ~オープンデータとリビングラボによる共創型の課題解決~」
【関連記事】資源循環を通じて地域のつながりをデザインする「横浜市資源リサイクル事業協同組合」
【関連記事】海洋プラごみから生まれた工芸品「buøy」が問いかける、プラスチックの価値
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Circular Yokohama Editorial Team
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