横浜国立大学大学院の川村出准教授、金井典子さんらの研究グループは2020年3月、コーヒー粕から環境に優しい素材「セルロースナノファイバー」を抽出することに成功しました。*
植物の細胞壁に含まれるセルロースから作られるセルロースナノファイバーは環境に優しいだけではなく、鉄より5倍軽く、5倍の強度を持っています。また、断熱性にも優れており、自動車部品や建材、フィルターなど様々な用途に活用できる夢の素材と言われています。
研究グループは、TEMPO酸化法という環境負荷の少ない方法を用いてセルロースナノファイバーを作り出すことに成功しました。コーヒー粕から抽出できるセルロースナノファイバーはコーヒー粕の乾燥重量のわずか10%程度を占めるセルロースによりますが、日本国内では毎年45万トンものコーヒー粕が出ており、回収の仕組みを確立することができれば、原料の安定的な調達も可能となります。
これまで大半が廃棄されていたコーヒー粕から環境配慮型の素材を取り出すという優れた循環型の技術だと言えます。
* N. Kanai, T. Honda, N. Yoshihara, T. Oyama, A. Naito, K. Ueda, I. Kawamura, “Cellulose nanofibers isolated from spent coffee grounds and their composite films with poly(vinyl alcohol): a new non-wood source” (2020) Cellulose 27, 5017-5028.
DOI: https://doi.org/10.1007/s10570-020-03113-w