ドリップコーヒーの残り粕で描く日本画

横浜市を拠点に日本画家・造形作家として活動しながら、美術教師としても活躍する中田晋一(なかた・しんいち)さんが考案した、ドリップコーヒーの残り粕を画材とするアップサイクルアートです。

中田さんがコーヒー粕を使った日本画を描き始めたのは1995年頃。もともとは「コーヒーを飲むのが好き」という想いから始まり、コーヒーのザラザラした質感が日本画に似ているように感じて塗ってみたのがはじまりでした。現在ではコーヒー粕に加えて、貝殻を使った胡粉(ごふん)という日本画の白色絵の具や、エコアートアーティストの綾海(あやみ)さんから提供された鹿の骨や角を焼いて作った絵の具、マグロの骨や竹、プラスチックの粉末などを一部使用して制作が行われています。

コーヒー粕の日本画は、中田さんの個展で展示されるほか、Circular Yokohamaが運営するYOKOHAMA CIRCULAR DESIGN MUSEUMでも展示を行っています。

ここがサーキュラー!

1. 身近な廃棄物をアップサイクルし、アートに昇華

世界におけるコーヒー消費量は増加傾向にあり、日本でもコーヒーチェーン店の出店拡大とともに嗜好品として欠かせない存在となっています。しかし、抽出後のコーヒー粕はそのほとんどが再利用されずに廃棄されているのが現状です。コーヒー粕の日本画は、通常廃棄されるコーヒー粕を画材として活用し、その風合いを活かして絵画として新たな価値を生み出しています。これは、廃棄物にデザインやアイデアといった付加価値を持たせ、別の新しい製品に生まれ変わらせるアップサイクルの好例です。

2. 地域資源を活用した環境教育ワークショップを開催

一般家庭においても身近な存在であるコーヒーは、環境教育プログラムの教材としても活用が可能です。本プロジェクトはCircular Yokohamaが運営する星天qlay内 qlaytion gallery(クレイション・ギャラリー)において、同商業施設内のカフェ2店舗から提供されたコーヒー粕を用いて絵画を制作するワークショップを開催した実績があります。ワークショップでは地域のパートナー企業から材料となるコーヒー粕を調達することで廃棄物を削減し、地域内の資源循環促進に貢献することができます。また、参加者はコーヒーを買うだけでは目にすることのない、捨てられてしまう素材に価値を見出す体験ができます。

3. コーヒーを通して「ごみ」との向き合い方を学ぶ

日本のコーヒー消費量は年間約40万トン(全日本コーヒー協会調べ)とされており、抽出後のコーヒー粕は水分を含むため、乾燥させずに廃棄した場合、およそ2倍以上の重量のごみが発生すると推定されます。コーヒー粕の日本画は、1枚の絵に使用するコーヒー粕は微量ではあるものの、通常廃棄物とされるものを資源として再評価している点がユニークです。絵画を見た人がごみ問題の現状や課題に興味を持ち、コーヒー粕をはじめとした生ごみを乾燥させて再利用する、あるいはビジネスとしてアップサイクルのアイデアを検討するなどの行動変容につながれば、中長期的な視点での廃棄物削減に寄与することができます。

プロジェクト概要

運営主体 日本画家・造形作家 中田晋一
カテゴリ リサイクル、教育
開始日 1995年頃
営業時間
住所 神奈川県横浜市
URL https://shinichinakata.wixsite.com/mysite
連絡先 Webサイトよりお問い合わせください

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